日本ではあまり知られていないかもしれないが、世界で活躍するケニアのモダンアーティストは数多くいる、伝統的でアフリカチックな作品ではない、彼ら独自の感性や挑戦が評価され、欧米で高い人気を得ているアーティストも珍しくない。

最近のケニアモダンアート界ではガラクタから独創的な作品を創り出すジャンクアーティスト、エヴァンズ・ングレ(Evans Ngure)氏に注目が集まっている。奇妙で繊細な作品に込められたメッセージとは何か、彼の展示会に参加してみた。

奇妙奇天烈なガラクタアート?

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エヴァンズ氏の作品たち。一見奇妙だが作りは繊細で、高い技術が必要になる。

遠目で見れば、一見して綺麗でコミカルなデザインの作品に見えるかもしれない。しかし、近づいてよく見てみると何やら見慣れない材料がちらほらあることに気づく。ボトルキャップやメーター、ヘルメットにはさみ等、こんなものまで使ってしまうのかというほどバラエティに富んだ『ガラクタ』が組み合わさり、一つの作品として成り立っている。

作品の値段は4万シリングから6万シリングと高価なものばかりだが、ケニアで話題のアーティストの作品となれば、購入を希望する者が後を絶たないという。

制作者はエヴァンズ・ングレ、ケニアのモダンアート界で注目を集める、『ジャンクアーティスト』だ。エヴァンズ氏は絵画や小物制作でも知られているが、ガラクタを扱ったジャンク作品を作り始めたことで話題を呼び、最近では度々メディアにも取り上げられている。

インターネットを使って作品を販売したところ、ケニアだけでなく海外からの注文が増加しているという。彼の作品が展示されている会場を見渡してみると、ケニア人と欧米人が半々といったところで、中には彼のファンでインスタグラムをフォローしているというアメリカ人もいた。彼の

作品を眺める来場者は先ず驚き、その後関心を惹かれ、同時に「これは一体どういう作品なのだろう」と頭の上でクエスチョンマークが浮かんでいるようでもあった。

ケニアが誇るジャンクアーティストの誕生

エヴァンズ・ングレ氏は幼少期から両親に漫画を描くことを教わり、ケニヤッタ大学では絵画を学んだ。大学在学中に恩師であり、国際的に評価されているケニア人アーティストのアンネ・ムウィティ教授が「何か変わった材料を使って作品を作ってみたらどうか」と助言したことが、ガラクタを使った作品の制作へと繋がった。

現在、エヴァンズ氏は地元のマーケットから買ってきたジッパーや車のスペアパーツ、使い古したベルトといった『個性的な』材料を使っては作品作りに没頭している。また、エヴァンズ氏はガラクタ以外にもジュエリーや風鈴、バックパック、財布といった様々な材料を使い、独創的な作品を世に出している。ボタン型のジュエリーを使った作品は彼の代名詞となり、国内紙を中心としたケニアメディアに頻繁に取り上げられるきっかけになった。

「私はユニークな作品を作っていると思います。他の誰とも似ていない作品を。それが関心を集めたのか、主にインターネットで外国の方やケニア人のお客様を中心に注文が入ることが多いですね」

2011年に作品の販売を始めると同時にFufukaという会社を設立した。スワヒリ語で、「死から生まれるもの」という意味だ。

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長谷川 将士

長谷川 将士

株式会社グラスルーツウォーカーズ代表取締役CEO
二十歳からケニアでフィールドワークを続け、大学院時代に行った調査が共著論文として書籍に掲載されています。専門はアフリカ政治経済学(特に紛争及び市民暴力)。最近は中間層論と経済成長論に関心有り。日本のアフリカ報道と学術研究やフィールドワークから見えるアフリカ像が大きく異なることに疑問を抱き、エビデンスに基づいた現場発信型メディアを立ち上げるべく、ケニアで奮闘しています。弊社ジャーナルサイトは平日、正午に更新していますのでご一読ください。