中間層実態と社会背景!

ここでは白戸圭一氏の中間層論を参照されたい。この論文「現代アフリカの「中間層」再考 -アフリカでのビジネス展開に向けて-」を参照すると、ILO定義ではアフリカで中間層の割合はほぼ変動していないことが分かる。

これまでの議論を踏まえた上で、このような反論があるかもしれない。「アフリカで一人あたりGNIが上昇していることは実際の所得向上や中間層の増加を表す数字ではないが、それらを否定する数字でもない」。その通りである。そのため、現実のアフリカ諸国の現状を考えてみよう。

アフリカ諸国で働く労働者の大半はインフォーマル部門の労働者である。つまり、企業に属さず、また多くの場合税金なども払わず、靴磨きや露天商、密造酒の製造やウェイター(ウェイトレス)として、その日暮らしに近い生活を送る人々である。ILO(国際労働機関)専門家のフレデリック・ラペイエ氏は「アフリカでは多くの国で農業外就業人口の半分以上をインフォーマル経済の就業者が占め、例えばタンザニアでは76.2%、マリでは81.8%に達しています。」と発言している。

事象解析:インフォーマル経済: ILOの新基準を用いてインフォーマル経済の罠から抜け出す方法

加えて、近年のアフリカ経済の問題として、雇用なき成長とか貧困削減なき成長という言葉がある。華々しいGDP成長に比べて雇用が増えておらず、貧困削減効果が薄いのではないかという議論を表した言葉だ。貧困削減がないにも関わらず、中間層人口は増加するだろうか。日本の報道とはまるで真逆の様な問題提起が開発援助機関や開発研究機関から発せられるているのである。そして、こうした現状を踏まえた上で、果たして魅力的な市場へと成長する兆しを見つけ出すことができるだろうか。筆者は積極的に肯定することはできない。

マクロ経済指標とは経済状態を正しく理解するための補助線のような役割であると、筆者は考えている。日本の様に確度の高い統計データが完備されている国は世界的にみれば少なく、ましてやアフリカ諸国のデータには何かと問題が多い。それらをあたかも絶対解として理解することは、実際の経済状況を誤解あるいは曲解してしまう可能性を常にはらんでいる。経済指標を用いる場合は適切に、尚且つ適用する国の社会背景まで理解して用いなければ、誤解するリスクは跳ね上がるだろう。

これら経済指標の理解に関する議論は初歩的なもので、経済学部ならば学部レベルの議論であろう。数字は分かりやすく強力であるが、それに振り回されることがあってはならない。冷静な報道が広まることを願っている。

 

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長谷川 将士

長谷川 将士

株式会社グラスルーツウォーカーズ代表取締役CEO
二十歳からケニアでフィールドワークを続け、大学院時代に行った調査が共著論文として書籍に掲載されています。専門はアフリカ政治経済学(特に紛争及び市民暴力)。最近は中間層論と経済成長論に関心有り。日本のアフリカ報道と学術研究やフィールドワークから見えるアフリカ像が大きく異なることに疑問を抱き、エビデンスに基づいた現場発信型メディアを立ち上げるべく、ケニアで奮闘しています。弊社ジャーナルサイトは平日、正午に更新していますのでご一読ください。