若年層の人口が増え続けるケニアでは身近に信頼できる保育園や幼稚園が不足しがちで、安心して子どもを預けられる施設を増やすことが急務となっている。しかし、未認可の保育園が多いケニアでは適切な知識や経験を持っているデイケア事業者が限られており、保子どもをとりまく環境が望ましいものとはいえない。

行政や民間がこれまで着手してこなかった課題に対していち早く動き始めたのが”キドゴ”だ。同社が展開するデイケアは地域を巻き込み、子供だけでなく家庭に対してもアプローチを続ける。ケニアにおける子供の早期教育の最前線を取材した。

見えない社会課題、子供の早期教育と保育!

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同社のマスコットを手に持つオペレーションマネージャーのエマニュエル・オグウェル氏。

2011年、サブリナ・ナターシャ・ハビブ氏は保育ケアについてケニアの首都ナイロビのインフォーマル地域を中心に調査を進めていた。調査からは換気が不十分で暗く、食べ物も粗末な未認可保育園に預けざるを得ない家庭が多数確認された。中には栄養失調となっている子どももおり、どの母親もこうした保育園に子どもを預けることが良いとは思っていなかった。

しかし、代わりとなる場所はどこにも用意されておらず、不安を抱えながら子どもを保育園に預ける母親は増加する一方だった。

サブリ氏の調査は新たに確認されたことはECD(就学前教育:Early Childhood Development)の重要性を知っている母親がほとんどいないことで、子どもの教育は学校に通い始めてから行うものだと考えている場合が大半だった。ケニアにおいて子どもの早期教育が行政も民間も十分にカバーできていない領域であることに気付いたサブリナさんは、キドゴ(Kidogo)という組織を設立することにした。

スワヒリ語で「小さい」という意味を持つこの組織は「すべての偉大な物事は小さなことから始まる」という諺(ことわざ)に由来し、ケニアで親御さんが安心して子供を預けられ、未就学児童へ適切な教育を提供するために生まれた。

医療・教育分野で有名なアガカーン基金で働いていたサブリナ氏と、元ボストンコンサルティングで辣腕を振るっていた共同創設者アフザル・ハビブさんがそれぞれ専門性を生かすことで、キドゴは見えざる社会課題の解決に着手し始めた。

地域一帯事業でデイケア水準の底上げ!

2014年、キドゴはキベラスラムに最初のデイケアセンターを開所し、スラム住民でも利用可能な料金で就学前教育を提供し始める。オペレーションマネージャーのエマニュエル・オグウェル氏によると、これまでのデイケアセンターでは提供できなかった環境つくりが肝心だという。

「従来こういうタイプのデイケアセンターは窮屈で、10平方メートルの部屋に30人の子供たちがすし詰めになっているところも珍しくありませんでした。照明も無いため暗く、二酸化炭素が溜まり体調を崩すリスクも高い。生活空間と調理場が併設されているので子供が怪我をすることも多く、先ずはセンターの環境を改善する必要がありました」

現在、キドゴはスラムや中低所得層地域に4つのセンターを構え、33人の常勤職員が子どもたちに手厚い教育と保育が行える体制を整えている。午前6時半から午後6時半まで営業しており、利用者の経済状況に合わせながら一日60シリング(約66円)から100シリング(約100円)ほどで利用できる。

キドゴの特徴の一つは、近隣コミュニティに専門的な保育・教育知識のコンサルタントサービスを展開していることだ。

「地域でデイケアを行っているグループにメンターサービスとグッズを提供することで、毎月200から500シリングの料金をいただいています。私達は定期的にトレーニングを行うことで地域のデイケアの水準そのものを底上げしようとしており、トレーニング参加者の考え方やサービスの質がどのように変化しているかを、事業状況とともに記録しています。彼らのビジネスを壊すことなく、共により良いもの拡大していく狙いがあります」

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長谷川 将士

長谷川 将士

株式会社グラスルーツウォーカーズ代表取締役CEO
二十歳からケニアでフィールドワークを続け、大学院時代に行った調査が共著論文として書籍に掲載されています。専門はアフリカ政治経済学(特に紛争及び市民暴力)。最近は中間層論と経済成長論に関心有り。日本のアフリカ報道と学術研究やフィールドワークから見えるアフリカ像が大きく異なることに疑問を抱き、エビデンスに基づいた現場発信型メディアを立ち上げるべく、ケニアで奮闘しています。弊社ジャーナルサイトは平日、正午に更新していますのでご一読ください。