JICA、エジプトに総額540億円の貸し付け決定!電力と輸送インフラ分野を支援へ!

国際協力機構(JICA)は2月29日、エジプト・アラブ共和国政府との間で、総額541億7600万円を限度とする円借款貸付契約を調印しました。今回の資金では、電力供給の増加及び効率性の向上と航空輸送インフラ整備を行うために使われます。以下プレスリリースより。

Egypt

政変から5年。エジプトの今とは。

エジプトでは2011年の政変以来、観光業、製造業といった主要産業の停滞、海外投資の落ち込みが影響し、経済状況が悪化しています。また、政変の原因となった生活環境の悪化や若年層の高い失業率へ対応するために包摂的・持続的な成長が求められています。 現政権の推進する改革等の進展により、公共投資や民間投資が増加し、2013/14年度に2.2%であった経済成長率は2014/15年度には4.2%に回復し、それ以降も4%台で継続する見通しです。 JICAは、エジプトの包摂的・持続的な成長の実現に向けて、本邦技術を活用しつつ、あらゆる社会・経済活動の基礎となる質の高いインフラ整備を支援していきます。

今回調印された円借款の特徴とは。

desert sunset power

(1)電力供給の増加及び効率性・信頼性向上を支援

2004年以降、エジプトの最大電力需要は年率6%と経済成長率の4.4%を上回るペースで伸びており、現在のままでは、2017/2018年度には最大需要電力が現在の供給能力を超える見込みです。この状況に対応するため、再生可能エネルギーの活用を進めつつ、発電設備容量を増強するとともに、送配電設備の整備によるエネルギーの効率化が求められています。

「配電システム高度化事業」では、アレキサンドリア、北カイロ、北デルタの各配電公社管轄地域に、配電自動化システムやスマートメーター(電力量計)等の技術を導入し、配電設備の更新・新設を行うことにより、配電ロスの削減及び電力供給の効率性・信頼性向上に貢献します。

また、「ハルガダ太陽光発電事業」は、本邦技術活用条件(STEP)適用事業として、紅海沿岸のハルガダ地域に大規模な太陽光発電所及び蓄電池施設を建設します。これにより、電力供給を増加させるとともに、蓄電池施設を導入することによって、再生可能エネルギーの増加に伴う系統の不安定化を防止するものです。

さらに、これら2件の事業を通じた配電ロスの低減や再生可能エネルギーの活用により、温室効果ガスの削減による気候変動の緩和に貢献します。

(2)持続的経済成長と雇用創出に向けた航空輸送インフラ整備を支援

ボルグ・エル・アラブ国際空港は、地中海沿いに位置する同国第2の都市アレキサンドリア市近郊に位置し、2010年の第一旅客ターミナル整備を機に本格稼働を開始しました。同空港では、需要超過によるサービスレベルの低下や運用の制約が生じており、旅客対応能力の強化が喫緊の課題となっています。

「ボルグ・エル・アラブ国際空港拡張事業」は、同空港の新たな旅客ターミナルの建設や周辺関連設備の拡張・整備を行い、エジプトの外貨主要獲得源である観光業及び海外出稼ぎを支える航空需要に対応します。これにより、航空輸送に係る利便性と安全性の向上に加え、同空港が位置するナイルデルタ地域の振興に寄与する事が期待されています。

本事業は、日本に優位性のある環境に優しい技術を使用予定であり、本邦技術活用条件(STEP)が適用されます。エジプト初の環境負荷を低減する空港(いわゆる「エコ空港」)を整備することにより、気候変動の緩和にも貢献します。

3つのプロジェクトの背景と詳細とは。

Camel - the ship of the desert

(1)「配電システム高度化事業」

(a)事業の背景と必要性

エジプトでは、2004/05年度から2013/14年度の10年間に平均4.4%の経済成長を遂げましたが、同期間中、最大電力需要はそれを上回る平均6.0%の伸びを示しており、電力需給は逼迫した状況です。一方、送配電ロス率は2010/11年度から増加傾向にあり、送配電ロスは電流の2乗に比例して増減するため、今後、電力供給量が増加するにつれ、さらに増加することが懸念されます。今後、安定的に電力を供給するためには、更なる発電設備容量の増強とともに、増加する電力需要に対応した送配電設備の整備・改善によるエネルギー効率化を行うことが喫緊の課題となっています。

(b)事業の目的及び概要

本事業は、アレキサンドリア配電公社と北カイロ配電公社、さらに北デルタ配電公社の管轄地域において、配電設備の更新・新設を行うことにより、配電ロスの削減及び電力供給の効率性・信頼性向上を図り、もって経済発展の促進及び気候変動の緩和に寄与するものです。

具体的には、各電力設備の増設・更新とともに配電自動化システムの導入により電力状況の状態把握を行うことで、最適な電力系統の構成を行い、電力ロスの低減を図ります。また、自動検針システムを導入し、スマートメーターと呼ばれる電力量計を使って遠隔で消費電力量や物理的破壊行為等のデータを定期的に取得することによって、正確に使用量等を計測するとともに、故障や盗電へ迅速に対応できるようにします。

なお、本借款の貸付資金は、配電自動化システム、自動検針装置、スマートメーター等の更新・新設及びコンサルティング・サービス(基本設計、入札補助、施工監理)に充当されます。

(2)「ハルガダ太陽光発電事業」

(a)事業の背景と必要性

現在、エジプトの電源構成は火力(89%)に大きく依存しており、火力発電に使用される発電燃料の77.8%を天然ガスが占めています。しかし、2011年のアラブの春以降、投資環境の悪化により石油・天然ガス開発が進まず、天然ガスの不足もあって停電が頻発しました。エジプト政府はエネルギー安全保障の観点から電源多様化が必要であると考え、2022年までに化石燃料(天然ガス、重油、軽油)への依存率を減らし、環境負荷の少ない再生可能エネルギー電源による発電量を全体発電量の20%まで増加させることを目指しています。

(b)事業の目的及び概要

本事業は、紅海沿岸のハルガダ市から北西15kmにあるハルガダ風力発電所において、20MWの太陽光発電所および関連施設を建設することにより、電力供給の増加、系統安定化および再生可能エネルギーの利用促進を図り、もって社会経済発展の促進及び気候変動の緩和に寄与するものです。

また、本邦技術活用条件(STEP)案件として、日本に優位性のある蓄電池施設が設置されます。同施設の試行的導入により太陽光発電所からの電力供給を安定化するとともに、域内系統電圧の安定化や夜間の電力供給に資するものです。

なお、本借款の貸付資金は、太陽光発電所、蓄電池施設等の建設、パワー・コンディショニング・システム(PCS)、エネルギー・マネジメント・システム(EMS)の設置、中央ハルガダ変電所までのケーブル敷設及びコンサルティング・サービス(入札補助、施工監理、研修)に充当されます。

(3)「ボルグ・エル・アラブ国際空港拡張事業」

(a)事業の背景と必要性

地中海沿いに位置するエジプト第2の都市アレキサンドリア市近郊に位置するボルグ・エル・アラブ国際空港は、2010年の第一旅客ターミナル整備を機に本格稼働を開始しました。同空港を利用する旅客者の8割は、海外への出稼ぎ等を目的としたエジプト人であり、湾岸諸国の労働力需要の増加や格安航空会社の参入に伴い、年間利用旅客者数は本格稼働開始時の想定(2014年100万人)を大幅に上回っています。同空港は、2013年の年間利用旅客者数は220万人を超えて国内4位の空港に成長し、2020年には同360万人に達する見込みです。そのため、同空港では、需要超過によるサービスレベルの低下や運用の制約が生じており、旅客対応能力の強化が喫緊の課題となっています。

(b)事業の目的及び概要

ボルグ・エル・アラブ国際空港において、新たな旅客ターミナルの建設及び周辺関連設備の拡張・整備を行うことで、急増する航空需要への対応能力を強化し、もってエジプトにおける航空輸送に対する利便性・安全性の向上に寄与するものです。

また、本邦技術活用条件(STEP)として、省エネ技術を活用する空調システム、太陽光発電、LED照明、トイレや壁面ガラスへの光触媒技術(有機物(汚れ)の分解促進により清掃回数を削減する技術)といった日本に優位性のある、環境に優しい技術の導入が検討されています。

なお、本借款の貸付資金は、新旅客ターミナルの建設、エプロン及び周辺関連設備の拡張・整備及びコンサルティング・サービス(入札補助、施工監理、空港職員の能力強化)に充当されます。


※写真は全てイメージです。
引用元:JICAニュースリリース

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