ブルキナファソの魔女に会いに行ってみた。〜アフリカの「魔女」と悲しい現実〜

「アフリカ」と「魔女」

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なかなか珍妙な単語の組み合わせかもしれないが、国際ニュースやルポルタージュ系の雑誌を読んでいると最近はわりとよく目にする組み合わせだ。最近もナイジェリアで魔女にされた子供が保護されたニュースが話題になった。

ナイジェリアなどアフリカでは信仰によるが、ある日突然「魔女」と宣告された人間が、差別や虐待、拷問を受け、時には死亡する悲劇が起こっている。
アフリカの子どもたちを支援する団体の創設者、デンマーク人のアンニャ・リングレン・ロベーンさんは1月31日、ホープ君を救助。発見されたホープ君は栄養失調で虫がわいていたという。
魔女とされた2歳のホープ君は親に捨てられ、生まれた村で8ヶ月間も1人で懸命に生きていたとされる。(“魔女“とされ捨てられた2歳児を保護 ナイジェリアより)

「魔女」と言うと、ほうきに乗って空を飛ぶのを想像してしまうけれど、ここで言う「魔女」はいわゆる「魔女の宅急便」風の「魔女」ではなく、英語で「ウィッチ・クラフト」というアフリカの風習を直訳したものだ。

日本語でいう「魔女」ではこの風習のニュアンスをうまく言い表せないけれど、「アフリカの田舎の村で原因不明の死者などがでた際に、村の呪術師が、まじないか何かを根拠に、ある女性を村の問題の元凶・『魔女』だと言って差別し、村から追いだす風習」である。

この「ウィッチ・クラフト」は主に、流行り病など田舎の村で死亡問題が頻繁に起こった際に行われるらしい。どうやって普通の女性が「魔女」にされるのかというと、次のような魔女認定の仕方がある。

・呪術師が作った苦かったり渋かったりとてもじゃないけれど飲めないような植物のしぼり汁を飲むよう強要され、全部飲めない女性が「魔女」。

・村に死者が出た際、死者の棺を皆で担ぎ、悪霊が導くまま村を練り歩いて、たどり着いた家の女性が「魔女」。

・レビレート婚(死んだ兄の寡婦を弟が娶る婚姻習慣)で寡婦との結婚を望まない男性が、結婚したくない理由を「あいつは魔女だから」とでっち上げて、寡婦を「魔女」呼ばわりする例もあるらしい。

「魔女」に会いに行ってみた

ブルキナファソでのウィッチ・クラフトの問題は、2005年に「デルウェンデ」という映画が作られてから盛んに議論されるようになったそうだが、都市部ではなく田舎の村ではいまだに存在する根が深い問題のようだ。

[youtube: https://www.youtube.com/watch?v=4PNLtcRuRn8]

「DELWENDE」 ピエール・ヤメオゴ 2005年 ブルキナファソ

ふとしたきっかけで、この「デルウェンデ」という映画を見た僕は映画の中に登場する実在の「魔女」避難センターに行ってみた。

ワガドゥグ市北部にあるデルウェンデ・センター。「デルウェンデ」とは『神に身を委ねよ』という現地語らしい。ここでは、約三〇〇人の「魔女」を収容している。施設は一九六六年に市営の施設として建てられ、一九八三年からカトリックの宣教団体が運営をしている。

le Centre Delwende à Ouagadougou(デルウェンデ・センター)

資金は寄付と補助金がメインだそうだが、センター内で豚や野菜を育てて売ったり、コットンを「魔女」が手作業で紡いだ糸を売ったり、また農繁期に農場で日雇い労働をして得た収益で運営しているそうだ。

二〇年ほど前までは地域の住民も「魔女」とされた収容者を怖がって、施設で女性たちが紡いだコットンも「魔女と関わりたくない」とまったく買わなかったり、センターの前の道を通る時も「魔女」から魂が抜かれないようにヘソを押さえて、石を口に詰め込みながら走って通ったりしていたそうだ。

(参考)AFRIK.COM

「魔女」と断罪され、ここで生活している老婆たちには一切フランス語が通じない。首都のワガドゥグでフランス語が通じないことは通常なかなかありえない。フランス語の通用しない田舎の村から着の身着のまま逃げてきた女性たちなのだろう。そういう意味でも周囲から隔絶された「ムラ」がここに出来上がっていると言える。

中にいる少年に話しかけた。

―何してるの?

「お母さんに会いに来た。」

―お母さんはここにいるの?

「うん。」

―そうなんだ・・・

「魔女」としてムラを追い出された母親に会いに来たという。ちいさな子供にとって母親と分かれて暮らすこと自体苦しいことなのに、この少年の場合は、母親が「魔女」としてムラを追い出されたという、救いようのない悲劇に見舞われている。

彼のきょとんとした明るい笑顔が逆に僕をとても悲しくさせた。

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