納豆にあんこ、お惣菜まで!東アフリカの日本食を支える陣屋(JINYA)の味!

海外に住む日本人にとってなにより困るのは日本の味が恋しくなること。特にアフリカでは日本の食材を取り扱うスーパーやデパートは極一部で、多くの日本人が一時帰国の際に寿司や納豆を『食べ溜め』たり、重量ギリギまで日本で買った食品をアフリカへ持ち帰ることでやりすごす人も少なくない。

現地ではとにかく貴重な日本の味だが、ケニアのナイロビでは長年日本食材を扱い、ケニアだけでなく東アフリカに住む日本人の心の支えとなっているお店、陣屋(JINYA)がある。長年アフリカで活動する者ならば一度は耳にする陣屋のこれまでとこれからを取材した。

『救いの神様』、陣屋

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陣屋の商品棚。現地で生産しているコシヒカリやもち米、小豆(あずき)も手に入る。

陣屋は2001年頃、一人の日本人女性がナイロビで店を開いたことから始まる。『陣屋さん』こと、陣山禮子(れいこ)さんは1989年からケニアに移住したが、当時は日本料理や食材を提供している店は一つもなく、何とかして日本の味をケニアで味わえないかと苦心していた。

当時、お米はスーパーで売っておらず、書類を持って政府の倉庫に買い付けに行くも、ネズミのおしっこの臭いがするパサパサした米しか手に入らず愕然としたこともあった。それでも何とかして日本の味を食べたかった陣山さんは現地で大豆が手に入ることを知り、知り合いから作り方を教えてもらい豆腐や納豆、味噌を作り始める。

自分でもビジネスを始めたいと考えた陣山さんはその後一念発起して日本の食材を扱う仕出し弁当屋兼食材店を開くことを決め、今も続く陣屋(JINYA)をオープンすることになった。

ケニアで日本の味が食べられると話題になるにつれて、陣屋を愛用する日本人客が増え始めた。ケニア在住の日本人はもちろん、周辺国からも陣屋に寄るために何とかケニア出張を詰め込もうとする日本人が現れ、東アフリカに長期滞在する日本人にとって陣屋はまさに心の拠り所となっていった。

日本食に飢えていた日本人が陣屋の納豆を食べて涙を流したり、陣屋を「救いの神様」と呼ぶ日本人がいたという話は決して大げさではなく、東アフリカに住む日本人にとって陣屋がどれだけ大切かが分かるエピソードだ。

陣山さんはその後体調を崩されて帰国することになるが、長年の功績から2013年、『日本食海外普及功労者』として農林水産省から表彰される。そして、陣屋はオーナーが変わった今もナイロビで日本の味を伝え続けている。

風味香るあんこ、ケニアでコシヒカリ

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主婦に人気な冷凍お惣菜の数々。スライス肉を使って生姜焼きを作る家庭も。

陣屋は何度か移転を繰り返したが、現在はレナナロードのAstrol Petrolの裏手側路地にある。1週間におよそ80~100人の日本人客が陣屋に訪れ、遠方から来るお客はここぞとばかりに大量に買い込む。定休日の日曜日以外は午後6時までオープンしており、特に多彩な食材が出揃う土曜日には日本人客で店内が賑わう。

日本のコンビニと比べると品揃えが豊富とはいえないが、日本の醤油やみりん、そばやうどんに加え、なんと現地生産のコシヒカリまで買えるのはアフリカ全土でここだけだろう。ラーメン類が韓国メーカーのものしかないのは残念だが、将来的には日本のインスタントラーメンやカップラーメンも仕入れたいとのことだ。

売れ筋の商品は陣屋手作りの品々で、特に味噌やキムチ、白菜の浅漬けは毎週買いに来るお客もいるほど。また、アイス類(小豆、抹茶、きなこ)はどれもまろやかで甘さが控えめ、市販では出せない味なので一度試してみたいところだ。

何より週末限定で作られているお餅(おはぎ、桜餅、抹茶餅など)は手作りあんこの風味を楽しめる絶品で、日本の味に飢えている方にはぜひとも味わってほしい。週末には新鮮な豆腐も購入できるのでキッコーマンの醤油をちょいとつけてお酒のつまみにするのも乙だ。

その他にも冷凍された納豆、お惣菜、あんこ、どら焼きなどが購入できる。特にお肉類はブロックの切り落としではなく日本のスーパーのようなスライス肉が手に入るので一度チェックしてみてはいかがだろうか。

また、日本企業が試験栽培しているミニトマトや契約農家から持ち込まれる春菊、小松菜といった日本でもお馴染みの野菜が販売されていることもあるため、スーパーマーケットの食材に飽きてしまった方には一見の価値があるだろう。

朝食は味噌汁、夕食は生姜焼き?ケニア人オーナーの食卓事情

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お店を切り盛りする、オーナーのワンガリさん。ケニアで日本の味を伝え続けている。

陣山さんの帰国後、現在はケニア人オーナーであるワンガリ・ワチラさんが店を切り盛りしている。陣山さんの手ほどきを受けたスタッフとともに持ち前の好奇心と日本食への情熱で、今でも立派に陣屋の味を伝えている。

地域に根付く日本食店として、ワンガリさんはこんなエピソードを紹介してくれた。

「数年前、ケニアであんこを手に入れるのはとても難しかったんです。輸入されている小豆を購入しようと6店くらいお店を回りましたが、やっぱり輸入品は高かった。当時は1キロ900シリングくらいでしたね。小豆がなければ和菓子は作れないので、それならば自分たちで栽培してみようと農家に相談して小豆を植えてみたところ、これが大成功でした。特に大きな問題もなく、今では簡単に美味しいあんこを作れることができます」

陣屋の精神は『無いものは自分たちで作ろう』、といえるかもしれない。陣屋が日本の味を伝える上で、手作り商品の存在は欠かせない。日本食を自分で作る内に日本の味が大好きになってしまったワンガリさんの家庭では、ケニア人としては一風変わった料理が次々と出される。

「朝食にはお味噌汁、夕食は豚の生姜焼きを出すと家族が喜ぶようになりました。ここはケニアなのにね(笑)。娘は豆腐にポン酢をかけて食べるのが好きで、いつもねだってきます。家には小豆が100キロほど貯蔵されているので、たまに赤飯祭りを開いて余った小豆を片付けちゃう、なんてこともありますね」

日本にいても赤飯を食べる機会はあまりないが、ワンガリさんの話を聞いてると何故だか無性に赤飯を食べたくなったのは、きっとここがケニアだからかもしれない。

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