タクシー運転手の途上国開発談話〜ソマリアが中国を歓迎する理由とは?〜

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タクシー運転手と話すことは一つの楽しみになりつつある。世界中どこへ行ってもタクシーを見つけることができる。同じといっても形は違う。カンボジアではモトドップ(バイクタクシー)。タイではトゥクトゥク(三輪バイク)。アメリカではキャブ。ただ、一つ共通していることがある。タクシー運転手はどこの国でも物知りで、国内外のホットな話題にやたら詳しい。しかもただの物知りではない。客や同僚と議論を重ね、情報収集だけでなく自分なりの考えを持っている。運転している間はラジオを聴き、客を待っているときは新聞を読む。あらゆる情報がタクシー運転手に集まる。

全ての開発援助関係者にとって情報収集は欠かせない日々の仕事。しかし、私たちが触れる情報はメディアを通じた声であって、市民・住民の声を耳にすることはほとんどない。タクシー運転手は日々住民の声を聴き、メディアの情報と現実を比較する機会を持つ。私の経験が正しければ、タクシー運転手は世間の声を代弁しているように思う。主観的、客観的問わず、様々な情報がいろいろな視点で集まる場所。それがタクシーであり、それを踏まえて議論を展開するのがタクシー運転手なのだ。

今回はソマリア系移民の運転手が熱く語ってくれた。西欧経済圏で暮らしながら母国へ馳せる思い。台頭する中国。祖国へ残してきた実家。家族経営の農場。アフリカの仕事をしていた、ソマリア難民支援をしていたと伝えると、運転手の話が一気に熱を帯びた。

― 出身地

ソマリア

― 年齢

1967年生まれ。47歳。

― 職業

タクシー運転手。

― タクシーの運転手をする前はどのような暮らしを?

ソマリアでの暮らしはとても豊かなものだった。弟と両親の5人家族で、小さな家族だったが、父は大農園の経営者だった。牧場には常に200頭の家畜がいて、果物畑にはマンゴー、バナナ、オレンジの木。季節に応じて色を変える、色彩豊かな自然環境で育った。

― ソマリアへの想いは?

私たちの豊かな国はクーデターでバラバラになった。西欧の侵略はひどいものだった。ソマリアの国土は分断され、フランス(ジブチ)、イギリス(ソマリランド)、イタリア(ソマリア)に同時に支配された。今でも多くのソマリ人がそれぞれの『国』にいる。

クーデターの後、経済的な支配が継続された。最近では、イギリス、カナダ、アメリカが石油の掘削を開始した。ソマリア沖の油田から石油をとっていく。西洋人のやり方は好きではない。ソマリアの資源をとっていき、最後は武器を売りつける。そして、疲弊した国土と人々に対して人道支援を行う。人道支援で潤うのは、西洋の企業であり、ソマリ人ではない。経済的支配、武器の提供、人道支援。「合法的なやり方」でソマリアをどん底に陥れたのは誰だろうか。

私は中国を歓迎している。全てのソマリ人も同意するだろう。最近、中国も石油の掘削を開始した。彼らが西洋人と異なるのは、ソマリ人へ利益の半分を分けてくれるところ。ソマリアには石油を掘削する技術がない。中国は技術を提供し、利益を配分してくれる。これ以上良いことはない。

西洋人は中国のやり方を悪く言う。「金の亡者だ」と。それでもソマリ人は中国員の手にキスをして歓迎するだろう。ソマリ人はアメリカ人が来た時も歓迎した。でもアメリカ人は食糧と同時に武器もばらまいた。中国人は少なくとも利益の半分をくれる。中国のほうがましだ。

― ソマリアへ帰りたい?

もちろん。でもソマリアへは住まない。過激派は自分を諜報機関のエージェントとみなすだろう。家族が保有している土地を売りたい。かつて保有していた農場は、推定4億円と言われている。ただ、国が安定するまでは売らないつもりだ。土地の権利書は今でもアメリカの銀行へ大切に保管している。ソマリアに戻れば裁判所がこれを正当な権利書として認めるだろう。

※談話はあくまで個人の意見であり、客観的な見解ではありません。

Povertist


記事転載元:タクシー運転手の途上国開発談話(2015/02/07)/ソマリアが中国を歓迎する理由とは?(2015/06/07 )
Photo credit: Monica’s Dad via Visual hunt / CC BY

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