コンゴの牛タン”ンバンガ”!
もう一品ご紹介する“ンバンガ”は実は牛の舌です。日本の皆さんが「タン塩」などで食べているのは牛の舌の中心部分、外側の硬い部分を削ぎ落としてあります。ンバンガは日本の皆さんが食べない、犬の餌に加工されているような外側の部分なのです。
これを、ニンニク、タマネギ、トマトなどの野菜や前述のキューブ型調味料などと一緒に3時間以上かけて柔らかくなるまで煮込みます。生ではナイフで切るのにも苦労するンバンガが、フォークがスッと刺さるくらいなれば出来上がり。一口噛むと外側は少しコリッとした食感を残しながらトロッと柔らかく、肉と野菜の旨味が口の中いっぱいに広がる、まさに牛タンシチューです。旨味が凝縮されたソースをフフにつけて食べるのがまた美味しく、最高のごちそうです。
このンバンガは外国から冷凍されたものが輸入されています。他にも、「マコソ」と呼ばれる豚足、「マスク」と呼ばれる豚の顔の皮、「フォア」と呼ばれる肝臓などの冷凍品も輸入されて家庭料理になっています。一方、日本でステーキや焼肉として食べるような肉は庶民の間ではほとんど流通していません。
日本にも“ホルモン料理”と呼ばれるものがありますが、この“ホルモン”は関西地方などの言葉で“放るもん=捨てるもの”に由来しているといいます。また、フライドチキンもアメリカの黒人奴隷の人達が白人が捨てる骨についた肉を調理して食べたところから生まれたといいます。
これらは虐げられた人々が生き抜くために編み出した料理です。同様にコンゴの人達も、よその国で捨てられるような部位を美味しく料理して食べている。わたしは、この国の人々が毎日食べている料理は、美味しいだけではなく、厳しい環境の中でも生き抜く知恵やエネルギーが詰まったものだと感じています。
他にもご紹介したいコンゴ独自の料理はたくさんあります。コンゴ川でとれる魚を塩干しにした“マカヤブ”は干し鱈に似ていたり、やはり川魚を燻し焼いた“ビシ・ヤ・コカウカ”は鰹節のような風味があったり、日本人の味覚に合いそうな料理もいっぱいあります。
また、フフの粉で作るドーナツ“ミカテ”やバナナフライなど、ストリートフードも豊富です。コンゴ民主共和国には、ぜひ味わっていただきたい料理や食べ物が山ほどあります。わたしのこのレポートを通じて、「最貧国」と呼ばれる国にも豊かな食文化があることを知っていただけたら幸いです。
そして、この豊かな食文化がこの国の魅力として広く認知され、この国の発展に繋がることが少しでもあればよいと願います。
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私の夫もコンゴ出身なのでとても興味深く読ませていただきました。キューブ型調味料を夫が愛用している背景がわかりましたし、食文化についてとてもよくまとめられていて読みやすかったです!
私の夫はフランス生まれのフランス人なのですが、彼の父親がコンゴ(でもコンゴ共和国のほうです)出身で、コンゴ料理を勉強したく検索していたところこちらのブログにたどりつきました。私も大変興味深く読ませて頂きました。他の記事もこれから読ませて頂きます。貴重な情報を日本語で発信して頂きとてもありがたいです。