紛争と干ばつが重なるアフリカ・ソマリアで、感染症や口腔衛生の課題に立ち向かうプロジェクトが日本から始動しました。
アース製薬株式会社とNPO法人アクセプト・インターナショナルが連携し、日本発の革新的な酸化制御技術「MA-TⓇ」を活用した口腔ケアと衛生教育を通じて、投降兵の若者や地域住民の健康改善を目指します。
紛争解決と感染症対策という2つの社会課題に、民間企業と国際NGOの協働という形で取り組む先進的なモデルが注目されています。
紛争地で展開される日本発の衛生技術
ソマリアの中部ガルムドゥグ州において、NPO法人アクセプト・インターナショナルとアース製薬株式会社が連携し、革新的な酸化制御技術「MA-TⓇ」を活用した感染症対策プロジェクトが始動しました。
MA-TⓇは「Matching Transformation System」の略称で、日本で開発された酸化制御の仕組みにより、強力な除菌性能と高い安全性を両立する技術です。食品衛生や医療現場、消毒用途など幅広い応用が進んでおり、今回はマウスクリーンジェルやマウスウォッシュスプレーとして、ソマリアの投降兵の若者たちに提供されます。
口腔衛生の悪化は歯周病を通じて全身疾患の引き金となるリスクも高く、特に水不足が常態化する同地では、予防の観点からも極めて重要な支援となります。プロジェクトではさらに、衛生教育を目的とした教材を用いて、若者への啓発活動も行われる予定です。
社会復帰支援と感染症予防を両立する取り組み
アクセプト・インターナショナルは、ガルムドゥグ州で武装勢力からの投降兵の若者を受け入れるリハビリテーションセンターを運営しており、年間60名から80名の若者に対して、基礎教育、宗教再教育、職業訓練、カウンセリングなどの包括的な社会復帰支援を行っています。
しかし、これらの若者の中には虫歯や歯周病による痛みを抱え、学習や訓練に集中できない者も多く、口腔衛生の課題が社会復帰の障害となっている現実があります。
今回の取り組みでは、アース製薬から提供されたMA-TⓇ製品と衛生教育プログラムを活用し、若者の口腔内の健康改善と感染症予防の両立を図ります。また、健康状態の改善は自尊心の回復や社会との再接続にもつながるとされ、医療支援の域を超えた意義のある支援として高く評価されています。
地域全体への啓発と共生社会への道筋
プロジェクトの第二段階として、センターで講習を受けた若者たち自身が、国内避難民キャンプなど脆弱な地域コミュニティにおいて、保健衛生の啓発活動を行う計画が進められています。
干ばつや紛争の影響で水資源が限られる同地域では、衛生環境が著しく悪化しており、地域住民の保健知識も乏しい状況です。
こうした中で、投降兵の若者たちがポスターなどの啓発資材を活用し、自ら学んだ知識を住民に共有することで、地域全体の衛生意識を底上げし、感染症の予防につなげる狙いがあります。
また、このような活動に若者自身が関わることは、贖罪や自尊心の回復、そして地域との和解や信頼構築に直結し、共生社会の実現に向けた一歩となります。支援を受ける側から担い手となるこの循環は、紛争後の再生における新たなモデルとして注目されます。