顧みられない病気の治療薬を開発する非営利組織「DNDi(Drugs for Neglected Diseases initiative)」が、第5回野口英世アフリカ賞(医療活動分野)を受賞しました。
DNDiは設立から22年にわたり、アフリカ睡眠病などの感染症に対する革新的な治療法を世界各国のパートナーと協力して開発し、数百万人の命を救ってきました。今回の受賞は、こうした現場主義の医療活動と国際連携の成果が高く評価されたものです。
顧みられない病気への国際的な取り組み
DNDi(Drugs for Neglected Diseases initiative)は、主に開発途上国の人々が罹患する「顧みられない病気(Neglected Diseases)」の治療薬開発を専門とする非営利の研究開発機関です。
顧みられない病気とは、患者数は多いにもかかわらず、商業的利益が見込めないために製薬企業による研究開発の対象から外れがちな感染症を指します。
DNDiはこうした医療の空白を埋めるため、アフリカ、アジア、ラテンアメリカを中心に臨床試験や製剤開発を行ってきました。2003年の設立以来、同団体はアフリカ睡眠病、内臓リーシュマニア症、シャーガス病、マイセトーマ、河川盲目症、デング熱、小児HIV、クリプトコッカス髄膜炎、C型肝炎などを対象に、13種類の新しい治療薬・治療法を提供し、現地での医療アクセス改善に大きく寄与しています。
今回、日本政府より授与された野口英世アフリカ賞(医療活動分野)は、そうした活動が国際的に高く評価された結果であり、授賞式は2025年8月に開催される第9回アフリカ開発会議(TICAD9)にて行われる予定です。
アフリカ睡眠病への経口治療薬が高評価
DNDiの取り組みの中でも特に評価されたのが、アフリカ睡眠病(ヒト・アフリカ・トリパノソーマ症)に対する初の経口治療薬「フェキシニダゾール(fexinidazole)」の開発です。
これまでアフリカ睡眠病の治療には注射による入院治療が必要でしたが、経口治療薬の開発により、医療体制が十分でない遠隔地の患者も自宅で治療を受けられるようになりました。
この革新的な医薬品の開発は、DNDiが世界中の大学、研究機関、製薬企業、資金支援団体と連携して築いたパートナーシップの成果であり、国際的な官民連携の成功例といえます。
DNDi Japanの事務局代表である井本大介氏は、「顧みられない病気を制圧するためには研究とイノベーションが鍵であり、日本とアフリカの知識とリソースの連携が不可欠です」と述べています。
また、今回の受賞は、こうした国際連携の枠組みがアフリカ現地での医療向上に実際の成果をもたらしていることを国際社会が認識した証でもあります。
日本政府の支援と今後の展望
DNDi代表のルイス・ピサロ医師は、受賞に際して「日本政府と賞委員会が顧みられない人びとに光を当ててくれたことに心より感謝します」と述べ、国際的な保健課題に対する支援の重要性を強調しました。
特に、近年は多国間支援の後退が見られる中で、日本政府による顧みられない病気への支援は時宜を得たものであり、今後の医療開発においても貴重な後押しとなると評価されています。
DNDiは今後も、子どもの健康やジェンダー平等、気候変動の影響など、新たな優先分野にも対応しながら、現地ニーズに即した医療ソリューションの提供を目指していきます。
顧みられない熱帯病が忘れ去られないよう、国際社会での認知度向上と継続的な研究支援の必要性を訴え続ける姿勢は、医療の公平性を実現するうえで極めて重要です。
今回の野口英世アフリカ賞の受賞を機に、DNDiの活動はさらなる注目を集めるとともに、より多くの命を救うための支援と協力の輪が広がることが期待されます。
- 記事提供元:DNDi、第5回野口英世アフリカ賞(医療活動分野)を受賞|PR TIMES