ガーナの首都アクラに位置するアグボグブロシーは、「世界最大級の電子機器の墓場」と呼ばれ、先進国からの電子廃棄物が大量に集積する地域です。
この場所で、美術家・長坂真護氏が率いるMAGO MOTORS JAPAN株式会社と、リサイクル素材開発を手がける株式会社REMAREが連携し、電子廃棄プラスチックから100%再生材のテーブル天板を製作しました。
現地の人々に雇用を生み出し、廃棄物の再資源化によって持続可能な社会を目指す本プロジェクトは、環境・産業・アートの融合による新しい価値創出の一例として注目されています。
電子廃棄物の墓場から生まれる新たな価値
MAGO MOTORS JAPANは、美術家・長坂真護氏が代表を務めるMAGO CREATION株式会社のグループ会社として2022年に設立されました。
同社は、ガーナ・アグボグブロシーで電子廃棄物を回収・洗浄・分別・破砕・粉砕処理し、現地住民にクリーンな労働環境と安定した収入を提供しています。
アグボグブロシーは、先進国から送られた電子機器が不法に廃棄されることで環境汚染が深刻化しており、社会問題として国際的に知られています。
今回のプロジェクトでは、現地で集められた電子廃棄プラスチックを活用し、REMAREのリサイクル技術によって100%再生素材の板材を開発。これを用いたテーブル天板は、単なる再生品ではなく、電子廃棄物に新たな命を吹き込む象徴的なマテリアルです。
さらに、有限会社竹正の高機能塗装技術を加えることで、美観と耐久性を兼ね備えた仕上がりを実現しました。
本取り組みは、ガーナのスラム街から持続可能な産業を生み出す挑戦であり、廃棄物を社会的価値へ転換する新たな試みです。
再生技術で拓く廃プラスチックの新しい出口
ガーナで回収される電子廃棄プラスチックは、複数の樹脂が混在し、金属片を含む複合素材であるため、従来はリサイクルが困難とされてきました。
REMAREは「燃やさず、埋め立てず、プラスチックを社会に貯蔵する」という理念のもと、独自の再生技術を導入。焼却によるCO₂排出を従来の約3分の1に抑えながら、オフィス家具に適した大判板材として再資源化することに成功しました。
この素材は、東京都に本社を置くプロロジス社の新オフィス内装に採用され、アートパネルやテーブル天板として実際に使用されています。
プロロジス社は「社会課題解決に向けた姿勢に共感し、高品質かつデザイン性に優れた素材を採用した」とコメントしており、本取り組みが社会意識の醸成にも寄与していることが示されています。
REMAREによる技術検証の結果、リサイクル困難な廃棄物を大判板材へと再生できることが実証され、廃棄物の「出口」を広げる新たな可能性が生まれました。
今後はオフィス家具にとどまらず、建材や内装材などへの展開も期待されています。
職人技で再生素材をプロダクトへ昇華
完成した再生板材には、名古屋市の塗装職人・有限会社竹正による高機能ウレタン塗装技術が採用されました。
再生プラスチックは塗装が密着しにくい素材であるにもかかわらず、竹正が長年培った下地処理技術により、小口まで美しく仕上げることに成功。耐久性と美観を兼ね備えた高品質な表面加工が実現しました。
これにより、単なるリサイクル製品を超えたデザイン性と実用性を両立するアップサイクルプロダクトとなりました。
MAGO MOTORS JAPANとREMAREは、今回の成果を皮切りに、ガーナでのリサイクル産業の持続的発展を目指しています。
現地の雇用創出と環境改善を両立させるだけでなく、日本の高度なものづくり技術と社会課題解決を融合させた循環型社会の実現を目指す取り組みです。
アグボグブロシーから生まれたこの100%再生材は、未来の循環型社会を象徴する存在として、世界に新たな希望を示しています。




















