ノーベル平和賞を受賞したチュニジアの団体が広島を訪問!平和への想いを語る。

アラブの春で激動の時代を迎えたチュニジア

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アフリカ大陸の北端、地中海に面したチュニジアは、小国ながら紀元前9世紀ごろのフェニキア人の入植から始まる古い歴史を持ち、一時は地中海最大の商業の中心地として繁栄、その後ローマ帝国のアフリカ属州となり、その繁栄を支えてきた。

地中海沿岸の覇権を争う諸勢力の歴史絵巻に翻弄され、アラブ人による制服、イスラム文化の影響を受けるなかで、地中海からサハラ砂漠まで、多様な自然環境にさまざまな文化が混ざり合う独特の空間と雰囲気を持つようになった。

1881年から続いたフランスの植民地支配から1956年に独立、その後二代続いた大統領の抑圧的政権を、「アラブの春」のきっかけとなった2011年のいわゆるジャスミン革命によって民主化に成功する。

ノーベル平和賞も受賞!政治対立・宗教抗争を対話で解決を!

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しかしながら、その後続いた政治的混乱の中、多元的、民主主義の考え方に基づき、対立する政治、宗教抗争を対話によって仲介する試みがなされた。その提唱者である”チュニジア労働総同盟”に加え、以下の4つの市民社会団体が集まり「国民対話カルテット(Tunisian National Dialogue Quartet:TNDQ)が2013年に結成された。

・チュニジア労働総同盟:UGTT
・チュニジア商工業・手工業経営者連合:UTICA
・チュニジア人権擁護連盟 LTDH
・チュニジア全国法律家連盟

その働きにより2014年に新憲法が可決され、平和裡の民主化に貢献しました。この功績により、2015年、TNDQにノーベル賞平和賞が授与された。

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国民対話カルテットが来日!語らった平和への願いとは!?

今回のTNDQの来日は笹川財団の招聘によるものであり、講演会や文化交流、広島訪問など共に、チュニジア大使館によるレセプションパーティーがさる7月22日に東京で開かれた。

レセプションは、TNDQ の方々の市民団体としての性格や、各団体代表各氏の穏やかな人柄を反映したような、大変明るく和やかな雰囲気であり、チュニジアに縁の深いピアニスト 杉本 太氏のピアノ演奏や、ノーベル賞平和賞のイメージソング「夢を見てもいいですか?」の制作者による演奏などの多くの音楽プログラムが大変印象的であった。

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各来賓のスピーチとともに、TNDQ のメンバー、UGTT総長 フセイン アッバースィー氏は、次のように語った。

「 今回、広島を訪れ、原爆慰霊碑、資料館を訪ねる機会に恵まれた。資料館の展示内容は、これが現実に起きたことである、ということがにわかには信じられないほどの、あまりの悲惨さに言葉を失うほどのショックであった。この事実を前に、自分が、巨人の前に立つ子供のように、いかに無力であるか、ということを思い知らされた。

幼い時に被爆し、その体験を今も語り継ぐ高齢の女性から、その体験を直接聞きことができたが、資料館で見たことがさらに実体験として聞くことによって深く心に残るものとなった。何より感銘をうけたのは、彼女が、それほどの悲惨な、筆舌に尽くしがたい経験をし、その後の人生の苦しみがいかに大きいものであったかにもかかわらず、恨み、復讐、といった感情を一切持たず、愛と平和を常に祈っている方であったこと。

自分がノーベル賞を受けたことなど、吹き飛んでしまうような気持ちであった。このような態度で、高齢になっても体験を語り続ける彼女のような被爆者の方々にこそ、ノーベル平和賞を差し上げるべきであろう。

私たちは、対話により政治的、宗教的諸問題を解決してきたとはいえ、チュニジアは現在でも安全、経済、多くの問題に直面しており、特に雇用の増大と確保、テロ対策が大きな課題となっている。チュニジアから多くの若者が、いわゆるイスラミックステートに加わる事態となっていることは、大変憂慮すべき問題であり、このようなテロに関わることは、もはや一国の問題ではない。さまざまな国際的問題を平和裡に解決できるよう、日本からの支援に期待する。」

この、謙虚で人間味あふれる発言には大変感銘を受けた。

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普段、ほとんどマスコミに取り上げられることなく、あったとすればテロ発生時など、よくないことで報道されることが主になってしまったチュニジア。革命が本当に成功したかどうか、いまだ混迷が続くなか、チュニジアの「良心」的存在としてTNDQの今後の活動が期待される。

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