ソマリア難民支援から難民問題とホストコミュニティの負担を考える〜ケニアの事例より〜

2. ホストコミュニティの負担軽減

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支援を検討する際も、ケニア政府へ最大限配慮する必要がある。たとえば、難民キャンプを訪問した際にキャンプ側からは学校の設備(机・椅子)の供与を求められた。難民も過酷な状況から逃れてきた人々だが、それを受け入れる人々、ホストコミュニティの負担も尋常ではない。自分たちの言葉も文化も常識も解さない人々が大量に地元に住み込む環境の変化、圧迫感は計り知れない。

国際協力機構(JICA)はケニア政府を通じてあくまで、ケニアへ支援を行う。そのため、ケニア政府がYesと言わない限りケニア国内で支援を展開できない。当然ケニア政府は自国民に利益がなければYesとは言わない。この点、難民だけを考えて支援を行うことができる団体とは事情が異なるかもしれない。

話を戻す。結論として、ホストコミュニティの小学校へも平等に学校設備を供与することでバランスをとった。JICAのプロジェクト概要「ソマリア難民キャンプホストコミュニティの水・衛生改善プロジェクト」をご覧いただければ、成果5が追加されていることがわかるだろう。

3. 寄付金は難民に集まり、ホストコミュニティには集まらない

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こうした緊急事態の際、世界の目は難民へと向く。ホストコミュニティもケニアの中では最貧地域であったにもかかわらず、世界は彼らへ目を向けない。当然、寄付金は国際機関やNGOを通じて難民支援へ多く集まり、ホストコミュニティは蚊帳の外だ。その結果、難民キャンプは発展し、ホストコミュニティは相変わらず何の変化もないままという状況が生まれる。

ダダブでも同様の状況があった。国際機関やNGOを通じて多くの支援が世界から届いている一方、ホストコミュニティは完全に蚊帳の外だった。

こうした事情を踏まえ、国際協力機構(JICA)はホストコミュニティの支援に特化して同地域を支援しており、本来もっと評価されるべきだと思う。しかし、ホストコミュニティ支援は難民支援に比べて地味であり、報道受けもしない。寄付金や予算が得られにくいこうした地味な支援は、国際機関やNGOができない分野であり、JICAのような二国間援助機関(バイラテラルドナー)だからこそできる分野かもしれない。

教訓-今回のヨーロッパへの「難民」問題と異なる点

難民なのか?という議論が近頃報道されている。上述したように、母国が平和になった際に帰国することを前提としているかどうかで、受入国の心情・負担は大きく変わる。今回のヨーロッパへの「難民」が市民権を得て半永久的に帰国しないとなれば、ご紹介したソマリア難民支援の事情とは相当状況が異なる。

いずれにせよ、受入国のホストコミュニティの立場からすれば難民ばかりに注目や支援が集まる状況は受け入れがたく、地元住民との軋轢をいかに回避するかが今後の課題だろう。

Povertist


1st Image Photo:DFID/2nd Image Photo:Oxfam International/3rd Image Photo:Bjørn Heidenstrøm/4th Image Photo:Ippei Tsuruga/5th Image Photo:Oxfam International

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