順天堂大学医学部熱帯医学・寄生虫病学講座の研究グループは、ウガンダ共和国のグル大学、大阪大学、愛媛大学、東京大学、産業技術総合研究所との共同研究により、マラリア治療の第一選択薬であるアルテミシニンに耐性を持つマラリア原虫がアフリカで出現していることを発見したと発表しました。さらに、この耐性マラリア原虫は、東南アジアからの移入ではなく、まだ耐性原虫がいないとされるアフリカ地域で独自に出現したことがわかりました。

最も有効な抗マラリア薬、アルテミシニン!

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マラリアは、ハマダラカ(蚊)によって媒介される感染症で年間2億人以上の新規患者と40万人以上の死亡者を出す世界三大感染症のひとつです。

アルテミシニンは、その迅速かつ強力な治療効果によって、現在最も有効な抗マラリア薬として、ほぼすべての流行国でマラリアの第一選択薬となっています。アルテミシニン治療の導入は、特に最大のマラリア流行地域であるアフリカで劇的にマラリア死亡者を減少させ、その功績に対してノーベル生理学・医学賞が贈呈されました。

現在に至るまで、マラリア患者の9割を抱えるアフリカではアルテミシニン耐性原虫は出現していませんでしたが、その一方で、すでに東南アジアの大メコン圏など一部でアルテミシニン耐性原虫の出現が報告されました。そこでWHOはアルテミシニン耐性封じ込めプランを策定し、薬剤耐性の拡散阻止に向けて努力が続けられてきました。

耐性原虫がアフリカで出現していることを発見!

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順天堂大学医学部熱帯医学・寄生虫病学講座の池田美恵博士研究員、橘真一郎助教、美田敏宏教授らの研究グループは、ウガンダのグル大学、大阪大学、愛媛大学、東京大学、産業技術総合研究所との共同研究により、アルテミシニンに耐性を持つマラリア原虫がアフリカで出現していることを発表しました。

研究グループは2014年から3年間ウガンダ共和国のグル市で、患者因子に左右されないアルテミシニン耐性の検出法として、実験室向けであった方法を、マラリア流行現場で実施できるように改良して定期的な調査を実施してきました。その結果、194人のマラリア患者において2%にあたる4人の患者がアルテミシニン耐性原虫に感染していることを発見しました。

うち1例は東南アジアに分布している耐性原虫より高い耐性レベルを示していました。また解析を行った結果、今回発見した耐性原虫はいずれも東南アジアから来たものではなく、アフリカで独自に出現、進化していることをつきとめました。

2017年、赤道ギニアに住んでいた中国人が帰国後にマラリアを発症し、アルテミシニン治療に抵抗性を示したことから、アフリカにアルテミシニン耐性マラリアが出現している可能性が示唆されていましたが、これまでその確証は得られていませんでした。今回の研究グループの発見により、それ以前からすでにアフリカにおいてアルテミシニン耐性マラリアが出現していたことが決定づけられました。

マラリア対策と薬剤耐性による危機回避に貢献!

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現在のグローバルなマラリア対策は、アフリカにはまだアルテミシニン耐性マラリアが出現していない前提で進められています。しかし、今回の発見は、アフリカを中心とした世界のマラリア対策の方向性に大きな影響を与えるとともに、今後アルテミシニン薬剤耐性マラリアの出現と拡散を広域に監視するのに役立ち、薬剤耐性による危機を回避させる可能性を示唆します。

研究グループは、すでに今回使用した耐性診断法よりさらに簡便な方法の開発を行っています。薬剤耐性マラリアの出現と拡散を広域に監視することが容易になることで、アフリカにおける耐性マラリアによる薬剤耐性の拡大の危機回避と世界におけるマラリア対策に大きな貢献が期待されています。

なお本研究は、米国科学雑誌 Emerging Infectious Diseases電子版(2018年3月20日)に発表されました。


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