新型コロナウイルスに世界中が苦しみ始めて1年半以上たった今、多くの人がコロナの蔓延を恨み、一刻も早い終息を願っています。
しかし、本当にコロナはただの悪者なのでしょうか。私たちにネガティブなものしかもたらさないのでしょうか。
コロナもきっと何かしらプラスの面も持ち合わせていると思った私は、『東アフリカで活躍する日本人に学ぶコロナのポジティブな捉え方』という企画をスタートさせ、主に東アフリカで活動する日本人から、コロナをポジティブにとらえる方法を学ぼうとしています。
シリアの魅力を伝える中野さん!
今回は、東アフリカのケニアに在住しているシリア支援団体Piece of Syria代表の中野 貴行さんです。
中野さんは青年海外協力隊員(現 JICA協力隊)として、2008~2010年までシリア北部にて、母子保健活動のプロジェクトに参加しました。その生活の中でシリアのすばらしさを知り大好きになります。
しかし、そんな大好きな国が2011年から戦争状態になり、友人達が巻き込まれることに胸を痛め、2015年から中東・欧州で現地調査をし、2016年にPiece of Syriaを創設しました。
Piece of Syriaでは主に、どこからも支援が届いていない地域に住むシリア国内の子ども達への教育支援、そしてシリアの魅力について伝える活動を行っています。
(私は中野さんの、「辛い現状を伝えて支援を集めるのではなく、シリアが素敵な国だと知っているからこそそこを伝えたい、『行ってみたい国』にしたい」という考え方にとても共感しました!!)
そんな中野さんにとってのコロナは、「やれる仕事が増えたし、奥さんと一緒にいれる時間が増えて、幸せな時間をもたらした時期」だそうです。
コロナの影響で仕事が増えた!?
中野さんのコロナ前の仕事のスタイルはというと、Piece of Syriaと兼業する形で、日本企業の駐在員としてドバイ、シリア難民支援NGOの短期専門家としてトルコ、と日本を行き来していました。
中野さんは中東で働く一方で、奥さんも国際協力関係の仕事でアフリカと日本を行き来するなど、なんと籍を入れて4日後からコロナ禍までは、半分以上が「時差つき」の遠距離生活だったそうです。
また、Piece of Syriaのスタッフは地元である大阪にいるのですが、日本にいる間は奥さんのいる東京で生活をするため、直接顔を合わせて会議ができる機会は限られています。
しかし世界中でコロナに対応するため様々な閉鎖が始まり、海外との短期的な行き来が難しくなります。その影響で、夫婦ともに海外渡航を繰り返すこれまでの仕事のスタイルを変えることになり、初めて東京に腰を据えて夫婦生活が出来るようになりました。
また国内で県を跨いだ移動さえも難しい中で、みなさんも経験した通り、オンラインミーティングが急速に普及し、Piece of Syriaの会議やイベントも、全てオンラインで行うことが出来るようになりました。
それまでは物理的な距離に加えて、本業をしながら関わってくれているスタッフとのミーティングの時間調整の難しさもありましたが、オンライン化によって定期的にコミュニケーションを取れるようになったそうです。
活動について伝えるイベントも、世界中の参加者に、シリアの人たちの生の声を届けられるようになり、コロナ禍以前よりも多くの方に応援していただけるようになったそうです。
中野さんは1年間東京にずっといましたが、移動ばかりだったコロナ前に比べて、より活発に仕事が出来るようになったのです。
家族とケニアで暮らすことで増えた幸せな時間!
そこで中野さんは、仕事の効率化に加えてあることに気づきます。
「これならケニアでも働ける」
当初の予定では、中野さんはトルコと日本を行き来しながら仕事をするため、ケニアで専門家として働く奥さんと離れて暮らすことになっていました。
しかし、オンラインで仕事が出来るならケニアでもできる、と気づいた中野さんは、ケニア渡航に同行し、現在も変わらず仲のいい夫婦で一緒に生活しています。
このように中野さんは、「オンライン化により仕事の可能性が増える」「奥さんと一緒に生活できる」という二大特典をコロナ禍に手に入れたのです。
子ども達が教育を受け、未来を描けるように!
そんな中野さんは現在、クラウドファンディングに挑戦しています。
戦争前は100%近い就学率で、高い教育レベルを誇っていたシリアですが、2011年から続く戦争により約1/3の子ども達が学校に行けない状況にあります。
戦争が終わった後に、シリアの平和の実現・復興の担い手である子ども達が、計算や読み書きの出来ない「スキマの世代」にならないように、一人でも多くの子ども達に教育を届けるために活動しています。
主な活動内容は先生達の給料の支援です。政治的な複雑さから援助機関からの支援が届かず、先生達が無給で働き続けています。この状態が続けば、先生たちは家族と自分の生活のために転職してしまいます。
しかし、給料を支援することで先生たちの辞職を防ぎ、通っている子供たちに質の高い教育を与えることが出来ます。
今回は新たにSAKURA幼稚園を作り、100人の子ども達が教育を受け、未来を描けるようにする挑戦をされています。この記事を機に、より多くのシリアの子供たちに質の高い教育を届け、以前の素敵なシリアの担い手たちをサポートしていただけたら嬉しいです!
クラウドファンディング詳細
- プロジェクト名:戦争から10年。シリアの子ども達に教育を続けられる環境を届けたい
- 期間:2021年10月29日(金)午後11:00まで
- URL:https://readyfor.jp/projects/syria2021
編集後記
多くの方がコロナ禍で生活ががらりと変わってしまったと思います。それがストレスに感じる、出来ないことが増えて困っている方も少なくないはずです。
しかし一方で、その生活の変化がこれまでなかった幸福をもたらしたり、新しいルーティンを作ったりしているのではないでしょうか?
暗い面だけを見ずに、少し遠目に自分の生活を振り返ってみると中野さんのように嬉しい変化にも気付けるのではないでしょうか?