昨年2024年12月5日、ケニアの首都ナイロビのTrade Development Bank Towersにて、JICAケニア事務所主催の「Innovate against GBV」ピッチイベントが開催されました。
このイベントは、ジェンダーに基づく暴力(GBV)問題に取り組むことを目的とし、約200社の中から選ばれた10のスタートアップ企業が自社のビジネスプランを発表しました。
このイベントは、JICAが実施パートナーであるGrowthAfricaと共同で主催し、Equity Foundation、Amplify Girls、Women’s World Banking、Zemko Kenya Limited、ロート製薬、Sisule & Associates LLP、ユニ・チャームといったスポンサーおよびパートナーから多大な支援を受けました。
今回は、そのイベントの様子をお届けします。
GBV×ビジネスの取り組み!
「Innovate against GBV」は、3月7日〜8日にケニアのデイスター大学で開催された「ビジネス・アイデアマラソン(アイデアソン)」に続く画期的な取り組みです。
今回のコンテストは、GBVの認知度向上、潜在的な解決策の特定、そして協力の促進を目的としており、審査後、JICAや協賛企業からのサポートが優勝ビジネスプランに提供されます。
オープニングセッションでGBVの現状を学ぶ!
GBV(Gender Based Violence)とは、性別に基づいた暴力の形態を指し、性別に関連する理由で個人が経験する物理的、性的、心理的、経済的暴力のことを指します。
ケニアでは女性の43%がGBVを経験しており、13%は性的暴力を受けています。また、18歳未満で結婚する少女は全体の23%にのぼります。
GBVは被害者だけでなく、経済やビジネス環境にも悪影響を及ぼします。そのため、GBVに取り組むことは社会貢献にとどまらず、組織や社会全体に利益をもたらし、健康的な経済環境の構築にも貢献することになります。
10のスタートアップ企業がGBV解決に向けたアイデアを発表
本ピッチイベントでは、JICAのメンタリング支援を受けたスタートアップ企業が登壇し、GBV問題に対する革新的な解決策を提案しました。
審査員には、Gender Based Violence Recovery CentreのAlberta Wambua氏、Women’s World BankingのHugo Spaulding氏、Equity BankのSilpah Owich氏、SafaricomのGodfrey Makori氏、JICAのMakiko Kubota氏が名を連ね、包括的な視点からビジネスプランの審査が行われました。
Residence technologies
- Founder: John Kioko
ビッグデータとAIを活用したウェブベースの住所システムで、住所を公開せずに配達社に正確な位置情報を提供します。女性のプライバシーを守り、緊急対応を15分以内に短縮することで、安心できる社会づくりを目指します。
Glow
- Founder: Vince Sila
電動スクーターのレンタルや購入を通じて、女性に収入を得る機会を提供するプラットフォームです。資金援助や安全機能(リアルタイム追跡・緊急アラート)を活用し、女性の経済的自立と安全を支援します。
MOMA Renewable Energy
- Founder: Yvonne Mose
有機廃棄物からバイオエタノールを製造し、家庭に持続可能で安全な調理燃料を提供します。また、GBV被害者を雇用し、廃棄物収集の訓練を通じて経済的自立を支援しています。
Heels4Pads
- Founder: Angela Waweru
ケニアで生理用品不足に苦しむ女性を支援するため、ヒールの販売や交換で資金を集め、生理用品を提供する活動を行っています。また、デジタルスキルや起業、金融リテラシーの訓練を通じ、GBV被害者などの女性の経済的自立を支援しています。
Amicus
- Founder: Ayub Rovert
GBVや法律に関する知識不足を解消するため、多言語対応のデジタルプラットフォームを提供します。AIチャットボットを活用し、簡易化された法的情報を音声、SMS、ウェブチャットを通じて提供し、地域団体やNGOを支援しながら広範な法的教育と個別サポートを実現します。
CONNECTHer
- Founder: Consolata Waithaka
GBV被害者を含む家事労働者と雇用主をつなぐモバイルアプリベースのプラットフォームを開発し、就業機会の提供とスキル向上のためのトレーニングを実施します。女性の経済的自立を支援し、ジェンダー平等とGBV削減を目指しています。
MARS AGROFARM
- Founder: Stephen Ndungu
女性農家に手頃な価格で農業機器を提供し生産性を向上させると同時に、GBVのリスクが高い非公式市場での安全な作業環境を支援します。女性の野菜売り向けに、プライバシーや安全性を確保した「SMART mama mboga」キオスクを設置し、経済的自立と安全な労働環境を実現します。
Kuza Freezer
- Founder: Dennis Onkanji
ケニアの小規模漁業に従事する女性を支援するため、太陽光電源で動く冷凍庫を提供します。PAYGモデルにより手頃な価格で利用可能にし、収穫後の損失を減らし、中間業者への依存を減らして女性が市場での価格交渉力を高められるよう支援しています。
Klinik Telehealth
- Founder: Steve Dimba
GBV被害者が医療アクセスに困難を抱える問題を解決するため、WhatsAppチャットボットを活用し、医師相談、薬局サービス、検査、治療、救急車対応などの医療サービスを提供しています。
Safework app
- Founder: Emmy Moorhouse
女性スタッフがセクシャルハラスメントや性的搾取・虐待の傾向を匿名かつ非公式に報告できるアプリです。このアプリは、組織のポリシーやトレーニング資料、GBVの紹介先、倫理ホットラインへのリンクを提供し、内部対応の改善と被害者の機密保持を支援します。
表彰の結果
第1位賞:MOMA Renewable Energy
- GAL LLC 現金賞 30,000KES
- JICA PoCサポートクレジット 最大200,000KES
- ロート製薬グッドバッグ
第2位賞:CONNECT HER
- GAL LLC 現金賞 20,000KES
- JICA PoCサポートクレジット 最大150,000KES
- ロート製薬グッドバッグ
第3位賞:Klinik TeleHealth
- JICA PoCサポートクレジット 最大100,000KES
- ロート製薬グッドバッグ
スポンサー/審査員からの特別賞:
- ユニチャーム(ソフィーパッド):Heels4Pads
- Sisule and Associates LLP(Anza村賞:2ヶ月の法的・規制サポート):MOMA & MARS Agrofarm
- Women’s World Banking(1ヶ月のメンタープログラム):CONNECT HER & Kuza Freezer & Klinik Telehealth
- Equity Bank Foundation(研修支援、能力開発、メンターシップ、イノベーションハブへの参加):全10社
今後の展望
全10社のスタートアップは、今後数ヶ月間にわたり事業の進捗を報告し、JICAがその成長を正式に確認した後、最終的な一位が決定されます。
優勝スタートアップには、日本への渡航が贈られ、日本で開催されるTICAD 2025において、世界の首脳たちに向けて自身のアイデアを発表するチャンスも提供されます。
このような認知を通じて、事業のさらなる拡大と、ジェンダーに基づく暴力への取り組みにおける先駆者としての地位を確立し、国際的な注目を集めることが期待されています。
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