日立製作所は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による「国際エネルギー消費効率化等技術・システム実証事業」の枠組みにおける「海水淡水化・水再利用統合システム実証事業」の委託先に採択されました。今後、NEDOとの受託契約を締結し、海外初号機として南アフリカ共和国のダーバン市において実証事業を開始します。
アフリカ最大のコンテナ港を持つダーバン市が抱える課題とは!?
南アフリカ共和国のダーバン市は、人口約360万人を抱える南アフリカ第3の都市です。アフリカ大陸における最大のコンテナ港やグローバル企業の工場を持つ産業都市であるとともに、2010FIFAワールドカップや第17回気候変動枠組条約締約国会議(COP17)が開催された国際都市でもあります。
また、「2030年にアフリカ大陸で最も福祉の充実した住みやすい都市になる」との目標を掲げており、インフラ整備についても先端技術を積極的に採用しています。一方、都市部への人口集中などにより水不足が深刻化していることに加え、電気料金の高騰なども背景に、省エネルギー型の造水システムへのニーズが高まっています。
日立の省エネ・低環境負荷型の造水システム「RemixWater」とは!?
日立の「RemixWater」は、海水淡水化と水再利用のプロセスを統合した、工業用水や生活用水向け(飲料水レベル)の新しい省エネ・低環境負荷型の造水システムです。「RemixWater」は、NEDOの「平成21年度~25年度 省水型・環境調和型水循環プロジェクト」において、海外水循環ソリューション技術研究組合(GWSTA)が「ウォータープラザ北九州」で実証研究を行い、開発されました。2011年4月から約3年間、一日あたり1,400m3を安定して造水しました。
現在普及しているRO(逆浸透圧法)膜を用いた海水淡水化システムでは、海水から塩分を取り除く脱塩工程においてRO膜でろ過する際、高い圧力での送水が必要となります。そのため、一般的に高圧ポンプの電気代が運転コスト全体の約半分を占めており、省エネルギー化が課題となっています。また、海水より高濃度の塩水が常に排出されるため、環境への影響も懸念されています。
一方、「RemixWater」は、海水淡水化と水再利用のプロセスを統合することで、省エネルギーと低環境負荷の両立を実現します。具体的には、水再利用プロセスでRO膜から排出される水を海水と混合して塩分濃度を下げることで、RO膜を通過させるための逆浸透圧を低下させ、脱塩工程に必要なポンプ圧力を約40%低下することができるため、大幅な省エネルギー化を実現します。同時に、海洋に放出される濃縮水の塩分濃度を、海水とほぼ同じ3.5%程度に低減することが可能となります。
日本発の省エネ・低環境負荷型造水システムを世界へ!
日立は、NEDOによる「国際エネルギー消費効率化等技術・システム実証事業」の枠組みにおける「海水淡水化・水再利用統合システム実証事業」の委託先に採択されました。本事業では、2015年2月から2016年3月まで行われた実証前調査に基づき、省エネ・低環境負荷を特長とする日立の海水淡水化・水再利用統合システム「RemixWater」の設備の設計・建設・運転を行います。事業期間は2016年11月から2020年11月の4年間の予定です。
ダーバン市の既設下水処理場内に給水人口約2.5万人分に相当する造水量6,250m3/日の「RemixWater」の設備を新設します。南アフリカ共和国で一般的に飲用水の水質基準として定められている「SANS241 (South African National Standard 241)」の達成と造水の安定性に加え、従来の海水淡水化システムと比較して約30%の省エネルギー性能と低環境負荷性能の実現を目指します。
今後、NEDOとの受託契約を締結し、海外初号機として南アフリカ共和国のダーバン市において実証事業を開始します。なお、11月17日には、同国ダーバン市において、関係者出席のもと、NEDOとダーバン市の間で覚書(MOU)の締結セレモニーが開催されました。
日立は、市場や顧客のニーズに応える「水総合サービスプロバイダー」をめざし、2016年4月に水ビジネスユニットを設立するなど、先進テクノロジーとパートナーリングを活かして水ソリューション事業のグローバル展開を加速しています。本事業を契機として、水資源が不足する国・地域に対して「RemixWater」をはじめとする先進の海水淡水化システムの提案を進め、水インフラの整備や課題解決に貢献していきます。
参考:「RemixWater」に関するWebサイト(英語版)
記事提供元:南アフリカ共和国における海水淡水化・水再利用統合システム「RemixWater」の実証事業開始について
Cover Image Photo credit: Darren J Glanville via VisualHunt / CC BY-SA