ケニアでは中古衣類の輸入貿易が一大産業となっている。ケニア国家統計局(KNBS)のデータによれば、昨年輸入された衣類は金額ベースで約131億シリング(約140億円)、重量ベースで約13万6,000トンに上り、未だ新品の衣類に手が出ない多くのケニア人の生活を支えている。最近では国内産業保護のために輸入衣類の関税引き上げなどが国会の議題に上っているものの、急増する人口により今後も輸入衣類の取引量は増加するとみられている。

ケニアでは一般的な中古衣類だが、実際にはどのように、そしてどこから中古衣類がケニアまでやってきているのだろうか?ケニア最大の中古衣類マーケットで取材を続けるうちに、海を越えたネットワークと中古衣類取引の現場が見えてきた。

ケニア最大の中古衣類市場はスラムのど真ん中?

ギコンバ(Gikomba)はナイロビのビジネス街の端にあるローカルマーケットだ。マジェンゴというスラムの真ん中に位置し、1952年から木材とトタン屋根で建てられた小屋が密集し始め、今ではナイロビでも最大級のインフォーマル(政府からの認可が下りていない)マーケットとなっている。

毎日夜が明ける前の午前3時頃からトレーダーが集まりだし、お目当ての品や掘り出し物を探し出す。ギコンバが有名な理由の一つには、このマーケットがケニア最大のミトゥンバ(Mitumba)、つまり中古の衣類市場だということだ。海を渡り世界のあちこちから集められた中古衣類はモンバサ港からギコンバを経由し、毎日ケニア中に配送されている。

ケニアでは新品の衣類を購入できる人々は未だ一部の中間層や富裕層に限られており、庶民レベルでは日常的に中古衣類が買われている。そしてケニアの地方や農村部で着られている服も、実はモンバサ港からギコンバを経て、消費者の下に届いているものが多かったりする。

やり手ビジネスマンの輸入貿易ビジネス

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パック詰めされた衣類の上に座るカマウ氏。

カマウ・モレノさん(仮名)はそんなギコンバで中古衣類の輸入販売を10年以上手掛けるベテランビジネスマンだ。彼の店には数トンを超える衣類が詰まったビニール袋が常に積み上げられている。

カマウさんによれば、ほとんどの衣類はアメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、そして中国から輸入されているそうだ。カマウ氏が商売を始めた当初は他の同じ店と同じく輸入されてきた商品を右から左へと売っていたが、そのやり方では割に合わないことに気付いたという。

「当時は何とか利益を最大化したいと思っていました。私の店にお客さんも集まっていたので、事業拡大のため自ら輸入ビジネスを行うことを思い付いたんです。早速、輸送会社に連絡をして各国から商品をかき集めました。そうすると、次第に卸売り業者をしている顧客たちが国別に商品を指定するようになったんです。こうなると需要と供給のバランスをとるのがとても簡単ですよね」

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遥々海を越え渡ってきた、コンテナに積まれた中古衣類。

カマウ氏の下には数千を超える中古衣類の袋がひっきりなしにやってくる。積み荷が港に着いた時から卸売業者からの予約が入っており、その後ナイロビの工業地域にある倉庫へと輸送される。

「積み荷がモンバサ港に着く日を常に顧客と共有しています。積み荷が外国からモンバサに着くまで大体3~7週間かかります。輸送料に20~30万シリング(約22万〜33万円)、倉庫代が月に2万シリング(約2万2000円)。中古衣類一袋の値段が1,500〜30,000シリング(約1,650~3万3,000円)で、85%くらいが粗利になりますね」

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カマウさんの倉庫。グレードAやBの衣類が大量に保管されている。

一つのコンテナにおよそ550袋分の中古衣類が詰められている。そして、それぞれの袋は品質によってグレードが分けられている。

「一袋が45㎏で、AからDまでグレード分けされます。グレードAはケニア人に『カメラ(Camera)』として知られている、ほとんど新品同然の衣類です。グレードBは少し使用されたけど品質の良いもの、グレードCはそれよりも品質が劣るもの、そしてグレードDはスワヒリ語で『ファギア(Fagia)』と呼ばれる、投げ売りされているものです」

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長谷川 将士

長谷川 将士

株式会社グラスルーツウォーカーズ代表取締役CEO
二十歳からケニアでフィールドワークを続け、大学院時代に行った調査が共著論文として書籍に掲載されています。専門はアフリカ政治経済学(特に紛争及び市民暴力)。最近は中間層論と経済成長論に関心有り。日本のアフリカ報道と学術研究やフィールドワークから見えるアフリカ像が大きく異なることに疑問を抱き、エビデンスに基づいた現場発信型メディアを立ち上げるべく、ケニアで奮闘しています。