殺虫剤より安全で安価なサービスを!

ケニアの作物の中でトマトは特に害虫被害にあいやすい作物といわれるが、その対策としてファームトラック社はデルタトラップ(Tuta absouluta delta trap)を提供している。同製品は三角形の箱の形をしており、内側はハエ取り紙のような粘着剤が張られ、 箱の中に閉じ込められた害虫が外に逃れる術はない。箱が満杯になると内側の中身を取り換えるだけで何回でも使用が可能だ。

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デルタトラップの箱。中に粘着剤が張られており、害虫がビッシリと捉えられている。

「弊社の製品は殺虫剤を使用して環境に悪影響を与えるものではありません。殺虫剤を使用しまうと作物に残留してしまいますし、消費者の健康も心配です。環境だけでなく健康にも優しい製品を提供しています」

また、胡椒や唐辛子、アボカドには疑似フェロモンを使用することで芯食い虫を捕虫し、箱の中に閉じ込めて駆除を行う製品を提供している。化学物質は外国から輸入しているものの、これらの製品の開発と製造はケニアで行われている。

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写真:害虫を捕獲した様子を展示

「私たちはナイロビを拠点に活動していますが、ケニア全土で営業を続けており、地方でも知名度が高まっています。将来的にはより多くの農家の方が簡単に弊社の製品を利用してほしいですね」

同社の製品一つでおおよそ1/4エーカーをカバーできる。使用期間は6~8週間で、雨や日差しにも強く、殺虫剤を広範囲に散布するよりも安全でお金がかからない場合が多い。栽培時期が来ると対応商品の需要が高まり、たとえばマンゴーの栽培時期である9月からはバクトロルアーの需要が高まる。

価格は商品によって様々だが、バクトロルアーは370シリング、フェロモントラップは650シリング、他の毛虫駆除製品は700シリングほどで、農家にも手が出しやすい価格となっている。

現在の課題と今後の取り組み!

ファームトラック社の課題は一つでも多くの村に害虫対策のサービスと商品を届けることだ。国内の各農村地域に拠点を配置することはコストが掛かりすぎるため、同社ではオンライン販売を推進しており、M-PESAを活用してボタン一つで僻地にある農村まで商品が配送されるシステムを構築中だ。

サミュエル氏はケニアの害虫対策のビジネスには根強い需要があるという。農作物の需要は順調に増加しており、それに伴い害虫対策の必要性も増しているためだ。また、国際昆虫生理生態センター(ICIPE)と協力し、従来の使い捨て製品ではない、再利用可能な製品の開発を行っている。さらに特徴的なのは、捕えた虫を有効活用する方法を研究している点だ。

「捕虫剤などに含まれる化学物質は人体に影響があるため、捕えた虫を家畜に食べさせることができずに処分されます。しかし、私たちは研究を続け、有効利用ができる方法を模索し続けています」

害虫はいつの時代でも至る所で発生し続けており、ケニアのみならず人口増が続くアフリカ全土で対策の重要性が増している。最新の技術とテクノロジーを駆使したファームトラック社の製品がケニア中で利用される日が来ることを期待したい。


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長谷川 将士

長谷川 将士

株式会社グラスルーツウォーカーズ代表取締役CEO
二十歳からケニアでフィールドワークを続け、大学院時代に行った調査が共著論文として書籍に掲載されています。専門はアフリカ政治経済学(特に紛争及び市民暴力)。最近は中間層論と経済成長論に関心有り。日本のアフリカ報道と学術研究やフィールドワークから見えるアフリカ像が大きく異なることに疑問を抱き、エビデンスに基づいた現場発信型メディアを立ち上げるべく、ケニアで奮闘しています。