人口増が続くアフリカで農業は経済のみならず、人命に直結する重要な産業だ。しかし、近年では害虫の被害が次々と報告されており、早急な対応が求められている。昨年には南部アフリカで蝶の一種であるツマジロクサヨトウの幼虫による被害が確認され、アフリカ13か国の代表による緊急会議が開かれた。
会議の最終日には国連食糧農業機関(FAO)による警告声明が発表され、アフリカにおける害虫対策の重要性がクローズアップされることとなった。同年ケニアでもツマジロクサヨトウが大発生し、メイズ、ソルガム、ミレットなどの主食穀物が食い荒らされ、農民の生活を脅かした。
ツマジロクサヨトウは未だに抜本的な対策を見つけられていないが、ケニアでこれまでには見られなかった害虫が出現する事例が他にも確認されており、農民は対処に頭を悩ませている。
害虫対策に取り組む、ファームトラック社!
害虫への対策無しにケニア農業の未来はない。こうした現状の中で近年注目を集めているのがファームトラック社(Farmtrack Consulting Ltd.)だ。同社は害虫対策のコンサルタントと関連商品の開発・販売を行う企業として2014年に創立された。
これまで害虫に対して効果的な対処方法を持てていなかったケニア農業の現状を目の当たりにし、現場で起こる様々な害虫問題を解決するために尽力している。同社の特徴は害虫の捕獲や駆除のために様々な『罠』を提供していることだ。殺虫剤は使用されておらず、捕虫剤やフェロモンなどの化学物質により効率的かつ安全な駆除を可能にしている。
原点はマンゴーの害虫駆除!
写真:ファームトラック社のサミュエル・ムチェミ代表。手には同社が提供する害虫駆除の『罠』が載せられている。
同社代表のサミュエル・ムチェミ氏によれば、初めに着手したのはハエの駆除からだった。「先ず私たちは2003年にケニアで初めて発見された、果実類の害虫である”キイロショウジョウバエ”を駆除することから始めました。この害虫は主にマンゴーの生産に影響を与え、莫大な経済的損失が発生しました」
当時キイロショウジョウバエが発生した農場ではほぼ100%のマンゴーが商品として使い物にならなくなっていた。そこで同社が持ち込んだのがバクトロルアー(bactrolure)という商品だ。これは同社の目玉商品となっており、現在ではケニアでは多くのマンゴー農家で使用されている。
バクトロルアーは小箱の中に取り付けられ、特殊な成分がキイロショウジョウバエをおびき寄せると同時に箱に捕らわれた害虫を効率的に殺すことができる。農場の場所にもよるが、たとえばインド洋に面するモンバサでは30分もあれば箱がキイロショウジョウバエで一杯になる 。
バクトロルアーは雄のキイロショウジョウバエのみを対象としており、雄と雌の個体数のバランスを崩すことで全体の個体数を減らすことができる。サミュエル氏によれば科学的な実証テストで効果が証明されており、同製品を取り付けた農場では被害が90%も減少しているという
。また、雌のキイロショウジョウバエを対象に使われる罠にはトルラトラック(Torula Track)があり、これはペレット状の捕虫剤で水に浸して使用し、餌を食べにおびき寄せられたハエは罠に捕らわれ、最後には溺死する。
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