国際 NGO”ウォーターエイド”は、11月19日の「世界トイレの日」に合わせて、報告書「安全なトイレはどこに」を発表しました。最新の報告書によると、世界人口の 3 分の 1 の人々が安全なトイレを利用できず、11 億人以上の女性や女の子がそのことによって危機にさらされています。また、トイレを利用できる人口の割合が最も低いのはエチオピアで、トイレを利用できない国の上位 10 か国は全てサハラ以南アフリカでした。
11月19日は世界トイレの 日!最新の報告書が発表!
貧困下で生活する人びとの水と衛生状況改善に専門的に取り組む国際 NGO”ウォーターエイド”は「世界トイレの日」に合わせて、報告書「安全なトイレはどこに」を2017年11月16日発表しました。「世界トイレの日」とは、世界で起こっているトイレの問題を多くの人に知ってもらい、公衆衛生への関心を高め、問題解決を加速していくための日です。2001年11月19日に世界トイレ機関(World Toilet Organization)が創設され、「世界トイレサミット」が開催されました。その後、2013年の国連総会において、毎年11月19日が国連「世界トイレの日」と制定されました。
この最新の報告書によると、トイレを利用できる人口の割合が最も低いのはエチオピアで、93%もの人々がトイレを利用できない環境で生活しています。エチオピアは、スペインの人口とほぼ同じ 4,600 万人の女性と女の子たちが安全な場所で排泄することができず、健康被害や暴行の危険にさらされています。
安全なトイレを利用することは、基本的な人権あるにもかかわらず、世界人口の 3 分の 1 の人々が安全なトイレを利用できず、11 億人以上の女性や女の子がそのことによって危機にさらされています。また、トイレを利用できない国の上位 10 か国は全てサハラ以南アフリカでした。トイレを利用できる人口の割合は 28%にとどまり、5歳以下で命を落とす子供の数は先進諸国の15 倍にもなります。
適切なトイレを利用できない人口の割合が多い国 トップ 10
国名 | 割合 | 人数 | |
1 | エチオピア | 92.9% | 92,354,960人 |
2 | チャド | 90.5% | 12,697,120人 |
3 | マダガスカル | 90.3% | 21,886,092人 |
4 | 南スーダン | 89.6% | 11,062,628人 |
5 | エリトリア | 88.7% | 4,639,271人 |
6 | ニジェール | 87.1% | 17,324,706人 |
7 | ベナン | 86.1% | 9,364,257人 |
8 | トーゴ | 86.1% | 6,285,700人 |
9 | ガーナ | 85.7% | 23,495,896人 |
10 | シエラレオネ | 85.5% | 5,515,157人 |
世界で最も適切なトイレを利用できない人口の割合が多い国である東アフリカのエチオピアでは、人口の約93%が適切なトイレを利用することができていません。。一方で、野外排泄をなくす努力は実を結んでおり、2000 年に80%だった野外排泄率が、2015 年には27%まで減少しました。しかし、今なおエチオピアの4,600 万人の女性と女の子が、安全な場所で排泄することができていない状況です。
また2位のアフリカに中央部に位置するチャドでは、適切なトイレを利用できているのは9.5%しかいません。人口の約半数が世界銀行の国際貧困ラインである1 日 1.9 ドル以下の生活水準で暮らしており、平均寿命は52 歳と短く、毎年約9,150 人が、不衛生な水やトイレに起因する下痢症で命を落としています。
10位の西アフリカに位置するシエラレオネでは、保健センターや家庭に清潔な水や適切なトイレがなく、毎年2,000 人以上の新生児が、敗血症や不衛生な環境が原因の病気で命を落としています。また21人に 1 人の女性が敗血症により子供を失っています。
適切なトイレを利用できない人が多い国 トップ 10
国名 | 人数 | 割合 | |
1 | インド | 732,207,000人 | 56% |
2 | 中国 | 343,499,264人 | 25% |
3 | ナイジェリア | 122,802,379人 | 67% |
4 | エチオピア | 92,354,960人 | 93% |
5 | バングラデシュ | 85,449,092人 | 53% |
6 | インドネシア | 82,712,477人 | 32% |
7 | パキスタン | 78,873,482人 | 42% |
8 | コンゴ民主共和国 | 62,034,676人 | 80% |
9 | タンザニア | 40,886,656人 | 76% |
10 | ケニア | 32,306,737人 | 70% |
野外排泄をする人の割合が増えた国トップ10
増加率 | 2000 年:割合 | 2015 年: 割合 | 2015 年: 人数 | ||
1 | ジブチ | 7.2% | 15.6% | 22.8% | 202,680人 |
2 | マダガスカル | 6.2% | 37.8% | 43.9% | 10,645,915人 |
3 | カーボベルデ | 4.8% | 23.3% | 28.1% | 146,177人 |
4 | 赤道ギニア | 4.4% | N/A | 4.4% | 37,363人 |
5 | グレナダ | 3.5% | N/A | 3.5% | 3,783人 |
6 | ナイジェリア | 2.9% | 22.6% | 25.5% | 46,529,909人 |
7 | スリランカ | 2.6% | N/A | 2.7% | 548,572人 |
8 | コンゴ民主共和国 | 1.9% | 10.2% | 10.2% | 9,332,090人 |
9 | ナウル | 1.7% | 0.9% | 2.6% | 265人 |
9 | タンザニア | 1.7% | 9.6% | 11.3% | 6,021,264人 |
世界で1番野外排泄をする人の割合が増えた国であるスエズ運河の玄関口に位置する小国ジブチには、イエメンの紛争から逃れる難民が多く流入しています。ジブチでは、野外排泄の割合が5 年間で 7.2%増加しており、現在人口の4人に1人が野外排泄をしている状態です。
また2位のアフリカ南東部に位置するマダガスカルは、近年、政情不安により援助政策から取り残されています。世界銀行は、2030 年までにマダガスカルの野外排泄をなくすためには1年に1,000 万ドル、基本的なトイレを利用できるようにするには1年に9,000万ドル必要であると予想しています。
目標を達成するためにはさらなる努力が必要
ウォーターエイドジャパンの高橋郁事務局長は、「世界人口の 3 分の 1 もの人々が安全なトイレを利用できないというのは、深刻な課題です。国際社会は、2030 年までにすべての人々が適切なトイレを利用できるようにすることを目標として定めました。状況はここ数十年で大きく改善されていますが、目標を達成するためにはさらなる努力が必要です」とコメントを発表しています。