アフリカの産業構造にきちんと目を向けることが大切!

image2
アフリカ産業について語る高橋教授(右)。左は筆者。

―実際にアフリカの現場を歩き、取材や情報発信を行うメディアが未だ少ない。日本でアフリカに対する関心を持つ人が増えている一方で、情報供給側の量と質の問題があります。こうした構造的な問題をどう思われますか。

近年、日本でアフリカ熱が高まっていることは歓迎しています。青年海外協力隊経験者や若者の間でアフリカで起業する流れは以前は見られなかった。アフリカへの関心が大きくなっているのは嬉しいことですね。

ただ、現実のアフリカを理解する上ではいくつか注意点があります。商業用ビルが建っていて、ショッピングモールもあるなんて、未だに多くの日本人は信じないかもしれない。そういった部分を見ると、「おお、とても発展している」と思う方もいるでしょうね。

しかし、私達(研究者)の立場から気を付けなければならないのは、産業構造がどうなっているかですよね。

例を挙げるとサービス産業です。サービス産業には大きく分けて二つ特徴がある。一つは、観光を別として、サービス産業で外貨を稼ぐことは基本的にはできないということです。もう一つは、モールに店舗を持てば直ぐに現金が入ってきますが、製造業は懐妊期間(経済学用語、事業を始めてから現金を稼ぐまでの期間)が長い。

そして、アフリカは製造業においてその懐妊期間をある意味で避けてきている。つまり、製造業に投資して、中国企業製品などの輸入に対抗できるだけの体制を作れているかどうかといえば、それはできてないということです。1980年代後半から興ってきた東南アジアの成長とは相当質が違うんですね。

アフリカでいえば、高度成長の中で製造業が占める比率が下がってきています。これは東アジアの奇跡と呼ばれた、韓国から始まり、その後東南アジアや中国に拡大した工業化のプロセスとは全く異なります。むしろ、それらアジアの工業化の影響を受けて『脱工業化』が起こり、工業が相対的に後退している。そうした背景を理解せずにアフリカで持続的な発展が進んでいるという主張は間違っていると思います。

― 大手企業の支社長や国連援助機関のケニア支部代表などの主張を要約すると、「もっと投資を、もっと工業化を」というものが多い。しかし、アジア型発展の延長線上にアフリカ型発展があるとは思えません。アフリカではどのような発展が望まれているのでしょうか。

今すぐには難しい、ということですね。もっと前提条件がそろわないといけないのではないかと思います。1980年代までの東南アジアに対する日本人のイメージには、疫病が多くすぐに人が死んでしまう、労働者もあまり働かないというものではないかと思います。

しかし、これは間違っています。その頃には予防接種がかなり普及していたし、労働力の質が良くなって健康な人が多くなっていた。

もっと大事なことは、人口の大多数である若者がしっかりした教育をちゃんと受けられる環境をつくらなければならないことです。

アフリカではどうか。田舎の教育レベルは高いとはいえないし、教師の勤勉さ、ストライキで学校に来ないといった問題もあります。増加する子どもの数に学校が追い付かず、机の上でノートを取るスペースすらない、あるいはノートや教科書自体持っていないことも多い。

こうした環境が整わないと、きちんと教育を受けた質の高い労働力が生まれない。そうした労働力がないと、工場で生産を行うことも難しくなる。

次ページ>> 高橋先生から見たケニアの過去と今!


1  2  3

The following two tabs change content below.
長谷川 将士

長谷川 将士

株式会社グラスルーツウォーカーズ代表取締役CEO
二十歳からケニアでフィールドワークを続け、大学院時代に行った調査が共著論文として書籍に掲載されています。専門はアフリカ政治経済学(特に紛争及び市民暴力)。最近は中間層論と経済成長論に関心有り。日本のアフリカ報道と学術研究やフィールドワークから見えるアフリカ像が大きく異なることに疑問を抱き、エビデンスに基づいた現場発信型メディアを立ち上げるべく、ケニアで奮闘しています。弊社ジャーナルサイトは平日、正午に更新していますのでご一読ください。