A-GOALプロジェクトでは、7月15日~21日の間、ケニア支援ウィークとしてケニアの6つの地域サッカークラブを「ハブ」に約300世帯(1500名)への食糧・衛生用品の配布を行いました。
今回の記事では、その中の1つのクラブでの第1回支援の様子をご報告します。
そのクラブは、アフリカ最大のスラムである「キベラスラム」で活動するサッカークラブ「アガペ・ホープ・フォー・キベラ(アガペ)」です。
アガペは幼じみのケネス・アモロ(31)さんとコリンズ・ワソンガ(30)さんが2010年に立ち上げた団体。2人の地元キベラへの愛情が今回の支援の原動力となりました。
コミュニティーは家族同然!
今回、支援を実施したキベラスラムはケニアの首都ナイロビの南部にあります。
貧しい生活から抜けだすため、人々が地方から首都に上がってきたときに最初に移り住む場所です。その規模は年々拡大しており、現在は250万人以上が住むと言われています。
キベラスラムの住人の半分以上が働いておらず、食べるものも十分にありません。犯罪率も高く、ある調査では、3ヵ月以内で犯罪を目撃した住人はなんと98.8%。多くの犯罪組織が裏で活動しています。
「犯罪を抑えるためには教育と食べ物を確保しなければならない」コリンズさんがこう語るとおり、アガペが力を入れるのはプライベートスクールの運営と地域への食料提供です。
アガペは現在、3歳から12歳までの子どものためにプライベートスクールを運営しています。教育を提供するとともに、子どもたちを学校に留め、犯罪から彼らを守ります。またドロップアウトする生徒を減らすため、給食も提供もしています。
アガペは定期的に食料の配布もおこなっています。毎年12月のクリスマスシーズンにはサッカー大会を開催しており、2019年の大会では500人の子たちに無料で食事を提供しました。
「コミュニティーは家族のようなもの。家族を愛さない奴はいるか?」と、ケネスさんは地域コミュニティーへの愛を口にします。
貧しさと教育のなさが招いた友人の死
コリンズさんとケネスさんがアガペを始めたのは、友人の死がきっかけです。
2人はキベラスラム内のサバ地区、マシマニエリアで育ちました。家庭は貧しく、小さい頃から畑を手伝ったり家を掃除したりして学費を稼ぎました。
しかし、多くの友人は貧困から学校をやめ、ギャングを結成し、盗みなどをして生計を立てていました。
ある時、盗みをしていた友人が警官に打たれ、死亡する事件が起きました。ケニアでは警官の超法規的な殺人は起訴されることが少なく、関係者は泣き寝入ることしかできません。
「盗みをしていた友人は確かに悪かったが、それは学校にも通えず食べるものもなかったから。貧しさと教育のなさが彼を死に追いやった」(コリンズさん)
コミュニティーの人を救うには教育と食べるものを確保しなければならないと実感した2人は、2010年にアガペ・ホープ・フォー・キベラを設立しました。
小魚の煮干し「オメナ」とマスクを届ける
A-GOALプロジェクトと協力して行った今回の支援では、アガペが住民に配布する食料・物資を決めました。
トウモロコシの粉や米といった主食に加え、栄養のバランスを考えて、「オメナ」と呼ばれる小魚の煮干しと一玉のキャベツをリストに加えました。
キベラスラムには、ケニア西部のビクトリア湖沿いの街、キスム出身のルオ族も多く住んでいます。小魚の煮干しで郷土料理が食べられるとあって、住民は喜んで食料を受け取りました。
(コメやトウモロコシの粉の他、キャベツや「オメナ」も支援物資に加えられました)
今回の支援では、感染予防のためのマスク267人分も配布しました。このマスクは現地で活動する塚原ともさんのプロジェクトMASK4ALLから提供されたもの。塚原さんはケニアで感染が始まった3月よりマスクを作り始め現在、5000枚以上のマスクをスラムの住人に無償で配っています。
アガペは以前、塚原さんと協力してマスクを配布した経験があります。コリンズさんはA-GOALの支援時、マスクを配るだけでなく、住民に対してマスクのつけ方や洗い方、注意点などをきめ細かに教えました。
「ケニアには、寄付されたお金をポケットに入れて現地に全然渡さない“フリーフケースNGO”がいっぱいある。しかし、A-GOALプロジェクトは日本からの寄付をダイレクトにアガペの支援に使ってくれた」とコリンズさんは感謝を口にします。
「コロナが落ち着いた後もA-GOALプロジェクトと協力していきたい」とケネスさんも継続した協力を期待します。
SOSを受け取ったひとりの青年
今回の支援の立役者がもう一人います。東京大学1年の石丸泰寛大さんです。
石丸さんは去年、大学入学と同時に休学し、世界一周の旅に出かけました。その旅でケニアに立ち寄った際に出会ったのが、アガペのケネスさんでした。
ケネスさんは石丸さんを家に招き、一緒に食事をし、グラウンドでは一緒に子どもたちにサッカーを教えました。自身もスラムに住みながら無償で子どもたちにサッカーを教えるケネスさんの姿に、石丸さんは感銘を受けました。
またケネスさんも、遠く東の果てからやってきてアフリカのスラムに溶け込む石丸さんに親近感を感じたと言います。
ケニアでも感染が広がってきた今年4月、石丸さんの元にケネスさんからSOSが届きました。
「ヤス、このままではコロナ感染で死ぬ前に飢え死にしてしまう」石丸さんはこのSOSを受け、A-GOALプロジェクトに駆け込みました。これが今回の支援の始まりです。
https://note.com/yasususu/n/nb39fc5921f5d
支援金受付中!
A-GOALプロジェクトは、アガペのような現地スポーツクラブと協力し、今後も現地でコロナ緊急支援を実施していきます。
その資金を得るために、現在寄付金を募集しています。
3000円以上寄付していただいた方には、今回の支援でも協力してくれたMASK54ALLが作ったアフリカ布のマスクがリターンとしてついてきます。
希望者は、このマスクを現在水害で苦しむ九州の被災地に送ることもできます。
またこちらでも寄付を受け付けております。
<口座振り込み>
- ゆうちょ銀行 店番:138 店名:一三八店
- 普通預金 口座番号:1274051
- 口座名義:オフィスキシ
- (記号:11310、口座番号:12740511)
※支援金の10%をプロジェクトの運営経費(送金手数料・サイト登録費など)
寄付していただいた方で、今後プロジェクトに関する情報の配信を希望される方は、お名前(匿名可)・メールアドレスなどをこちらのフォームよりご記入ください。
皆様、ご協力をお願いします。
プロジェクトメンバー(ボランティア)募集中
アフリカ現地に行くことが難しい中で、A-GOALプロジェクトでは、約80名のメンバーと現地スポーツクラブの指導者がオンラインコミュニケーションツールを活用しながらプロジェクトを運営しています。
本プロジェクトを共に運営していただけるメンバー(ボランティア)を募集しています。
こちらのフォームよりご登録ください。
プロジェクトに興味がある方、アフリカに興味がある方、スポーツを通した国際協力に興味がある方、ぜひ私たちと一緒にこのプロジェクトを進めていきましょう。
プロジェクトメンバー
岸卓巨((一社)アフリカクエスト理事、NPO法人サロン2002事務局長)/小林勉(中央大学総合政策学部教授)/林恒宏(大正大学地域創生学部地域創生学科准教授、(一社)ピースボールアクション代表理事)/福居恭平(KAI GLOBAL LTD、ケニア在住)/森下仁道(元ザンビアプロサッカー選手、筑波大学、第5回トビタテ留学JAPAN最優秀賞受賞)/青柳直希(JICAマラウイ事務所、Ai-Hub、世界に飛び出す日本人)/土屋雅人(SOLTILO株式会社 AFRICA DREAM SOCCER TOUR コーチ)/久世将寛/山口恵里佳/杉山弘樹/笹田健史(龍谷大学 Strength & Conditioning Coach, NPOメディア ganas 記者)/山口紗都美(青年海外協力隊2019-03次隊ジンバブエ・サッカー隊員(派遣前待機中)、Little Bridge Japanインターン、actcoin運営メンバー)/長塚灯(大正大学 地域創生学科3年 (林ゼミ所属))/辻英剛(Numba Solutions(個人事業・ザンビア))/佐藤陽俊(株式会社スクールウィズ)/赤尾邦和(国際移住機関(IOM)シエラレオネ事務所)/樽井翔大/鈴木由里花(中央大学 総合政策学部3年)/蕪山乃菜(中央大学 総合政策学部3年(小林ゼミ所属))/遠藤暁(青年海外協力隊(任期は2018年6月〜2020年6月まで))/沖田咲(元カンボジア水泳連盟)/杉山麻依子/二村元基(SOLTILO株式会社)/増澤尚享(JICA海外協力隊 2021年度カンボジア派遣 サッカー隊員(一時帰国中))/野口亜弥(S.C.P. Japan・共同代表 順天堂大学スポーツ健康科学部・助教)/青山啓二(クラーク記念国際高等学校横浜キャンパスグローバルスポーツ専攻長)/石丸泰大(東京大学文科三類1年 体育会サッカー部)/中塚義実(筑波大学附属高等学校保健体育科教諭・蹴球部顧問、NPO法人サロン2002 理事長)/宮嶋泰子(スポーツ文化ジャーナリスト)/糸数温子(一般社団法人daimon)/山本歩(Kenya Fruits Solutions・Love & Meals ltd.)/松本義和(MAXY LTD)/松尾雄大(日本ブラインドサッカー協会)/平野裕人(日本電気株式会社、国際障がい者活躍社会創造協会副代表理事兼広報、NECボッチャ部、日本ボッチャ協会登録選手、価値観ババ抜きインストラクター)/冨田英司(バックステージ法律事務所、同志社大学スポーツ健康科学部客員教授、龍谷大学教学部非常勤講師、大学スポーツコンソーシアムKANSAI理事)/江川真唯(上智大学総合グローバル学部)/河野雄太((株)東海理化、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会、大分-カメルーン友好協会)/牛玖真保(青年海外協力隊 2018年度3次隊 ラオス 体育隊員(一時帰国中))/小野かいり(郁文館グローバル高等学校)/呉夕蘭(郁文館グローバル高等学校)/草苅康子(東京大学大学院新領域創成科学研究科特任研究員、世界銀行東京防災ハブコンサルタント、日本マラウイ協会理事)/野村翼(郁文館グローバル高等学校)/竹田憲一(NPOシブヤ大学、NGO,NPOワールドランナーズ・ジャパン、PMI日本支部ソーシャル・プロジェクト・マネージメント研究会)/新美裕大(慶應義塾大学経済学部)/遠藤龍輝(スポーツ選手)/稲留亜佑美(SOLTILO UGANDA Ltd、SOLTILO BrightStars FC 広報兼現地マネージャー)/細川鼓実(郁文館グローバル高等学校)/西村日向(筑波大学大学院修士課程スポーツ国際開発学専攻、JICA海外協力隊(ルワンダ 陸上競技コーチ(一時帰国中))/柳田主税(株式会社ChiMa Sports Promotion Japan 代表)/石丸優子/明石健一(創価大学)/伊藤煌耀(郁文館グローバル高等学校)/大場由太(SOLTILO UGANDA Ltd. 代表、SOLTILO BrightStars FC ゼネラルマネージャー)/河合季信(筑波大学体育系)/横田知佳(元実業団マラソン選手)/新部遥希(特定非営利活動法人日本ブラインドサッカー協会(JBFA)、特定非営利活動法人国際障害者スポーツ写真連絡協議会(パラフォト))/伊藤政則(TAIYO株式会社 代表、小山市国際交流顧問、東京オリ・パラ小山市推進委員会委員及び専門委員会委員)/安藤 裕一(GMSSヒューマンラボ 代表取締役・医師)ほか
約80名 (2020年7月22日) (順不同)