ソマリアでの干ばつと紛争の激化により、ケニア東部のダダーブ難民キャンプに流入する難民が増加しています。
ダダーブには現在、難民登録を済ませた23万3000人以上が暮らし、その多くは30年以上キャンプで生活しています。
また、滞在許可証を持たない人は8万人以上おり、2022年だけでも5万人以上がダダーブに到着しているが、まだ正式に難民として登録されていないのが現状です。
過密な環境での人道状況が悪化する中、ダダーブ難民キャンプを構成する3つのキャンプの一つ、ダガレイでは、重度栄養失調児の入院が急増中です。
国境なき医師団(MSF)は、30年にわたるキャンプの歴史のほとんどにおいて、ダダーブとその周辺で医療活動を展開してきました。
現在はダガレイ・キャンプを中心に活動し、簡易診療所2カ所と、ベッド数92床の病院を通じて、難民と地域住民を対象に基礎的な医療と専門医療を含めた包括的な医療を提供しています。
MSFは人道的ニーズの高まりから緊急援助を強化していますが、危機の悪化を防ぐには広い範囲での緊急対応が必要だと訴えています。
驚異的な入院患者数の増加
2022年、MSFがダガレイの小児病棟と入院栄養治療センター(ITFC)で治療した患者は、前年から33%増加し、過去最高の1万2007人を記録しました。
その圧倒的多数が子どもであり、子どもの入院数の驚異的な増加を裏付けるように、MSFのデータではダガレイの子どもの全急性栄養不良(ある集団における中程度および重度の急性栄養不良患者を合わせた比率)も増加傾向を示しました。
ダガレイの人道状況の悪化とキャンプの医療体制がひっ迫する背景にはいくつかの複雑な要因があります。
2022年10月末に宣言されたコレラの流行は続いており、難民キャンプだけでなく、ガリッサ郡とワジール郡の地域にも被害を及ぼしてるのが現状です。
深刻な干ばつと長引く紛争により、「アフリカの角」(※)では食料や水を求めて人びとは移動し続け、さらに資金不足による人道的対応の不足が追い打ちとなり、給排水、衛生、栄養、医療、保護など広い分野で、人びとのニーズに追いついていない状況が一層深刻化しています。
2023年はさらに人道危機が悪化
今年も難民をめぐる状況は厳しいと予想されています。
2022年12月、国連人道問題調整事務所(OCHA)は2023年3月から5月まで6期連続で雨量不足の雨期になると予測し、「アフリカの角」における人道危機は規模・深刻さ共に悪化するとしました。
人道援助機関・団体は、ニーズが急速に高まっている時に、さらに活動を縮小せざるを得なくなるため、今後予想される 援助活動への資金削減を懸念しています。
MSFは、地元の人びとや他の人道援助機関・団体と連携し、ダガレイ・キャンプでの包括的な医療にとどまらず、緊急援助を強化しています。
2カ所の医療施設を開設し、50基のトイレを建て、2基の貯水タンクを設置しました。
さらに、キャンプ郊外に住む新たに到着した約800世帯にビニールシートと床用のマットを配布しました。
MSFはダガレイ・キャンプの周辺に住む最も弱い立場の難民を対象に活動していますが、ダダーブの人道危機の悪化を防ぐには広い範囲での対応が急務です。
長期的な解決策も必要
MSFは援助国に対し、救命と保護に対応するための迅速な資金援助の開始を呼びかけます。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、より多くの人びとがダダーブに向かうと予想される乾期が近づく前に、混雑したキャンプから最大で8万人の難民を受け入れられるよう、2018年に閉鎖されたイフォ第2キャンプ再開のための資金拠出を援助国に要請しています。援助国が要請に応じ、緊急対応がとられない限り、難民の流入は人道援助団体が対応できるレベルを超えて危機を悪化させる可能性があります。
ダダーブの難民は30年にわたる長期的な緊急事態から抜け出せないでいます。
難民キャンプで深刻化するニーズへの対応が当面の優先事項であるとしても、ダダーブへの適用は遅々として進んでいないため、ケニアの法的枠組み、特に2022年に施行された難民法に盛り込まれた難民に対する長期的解決策の実施も同様に重要です。