2025年6月、ユニセフのキャサリン・ラッセル事務局長が西アフリカに位置するブルキナファソを訪問し、西アフリカ・サヘル地域における子どもたちの厳しい状況を訴えました。暴力、避難、気候変動などが引き起こす複合的な危機の中で、最も大きな損失を被っているのは子どもたちです。栄養不良や教育機会の喪失などの問題に直面する現状を伝えるとともに、国際社会に対して緊急支援を呼びかけました。
治安悪化と気候危機が子どもに与える影響
2025年6月、ユニセフのラッセル事務局長はブルキナファソを訪れ、西アフリカ・サヘル地域における子どもたちの過酷な現実に国際社会の関心を喚起しました。
治安が著しく悪化しているブルキナファソ、マリ、ニジェールの中央サヘル地域では、290万人以上が避難を強いられており、その半数は子どもです。暴力によって学校や保健センター、給水設備などが攻撃の対象となり、子どもたちは教育の機会を失うだけでなく、栄養不良、病気、児童婚、武装勢力による徴用といった深刻なリスクにも直面しています。
加えて、気候変動の影響による干ばつや洪水が食料供給に打撃を与え、地域住民の生活を困難にしています。
これにより、急性栄養不良に苦しむ5歳未満の子どもの数は2015年の220万人から2023年には600万人へと倍増し、うち250万人以上が「消耗症」と呼ばれる致命的な栄養不良に直面していると報告されています。
ラッセル事務局長は「最も大きな損失を被るのは常に子どもたちです」と強調し、危機の放置がさらなる悪化を招くことを訴えました。
治安悪化による教育の機会喪失と国内避難民の増加
サヘル地域では現在、8000校以上の学校が治安悪化や攻撃により閉鎖されており、何百万人もの子どもが教育の場を失っています。この教育機会の喪失は、将来的な貧困の再生産や社会不安の温床となる可能性があり、喫緊の課題とされています。
ブルキナファソ東部の町ファダングルマでは、暴力から逃れてきた国内避難民が生活する施設が存在し、そこでは限られた物資を分かち合いながら生きる人々の姿があります。
ラッセル事務局長は、かつて村で夫を殺害され、7人の子どもを抱えて逃げ延びたマリアムさんの話を紹介し、現地の厳しい現実を伝えました。彼女はまた、心理的ケアを受ける少年イブラヒムさんのように、暴力による深刻なトラウマに苦しむ子どもが多く存在することにも言及しました。
こうした子どもたちへの支援には、食料や教育だけでなく、心のケアや安全な環境も含まれるべきだとユニセフは強調しています。しかし、現地の支援ニーズは急増しており、資金は深刻に不足しているのが実情です。
ユニセフから国際社会への呼びかけ
課題が山積する中でも、支援の成果は確かに存在しています。
予防接種の普及や、地域保健員による遠隔地への医療支援、学校の再開支援など、ユニセフとそのパートナー団体は、困難な環境下でも現地政府やコミュニティと協力しながら活動を続けています。ブルキナファソ政府も、保健・教育・子どもの保護における投資を拡大しており、ラッセル事務局長は首相、外務大臣、保健大臣、教育大臣との会談において、感謝の意を表明しました。
また、ユニセフが支援するココロゴの農村地域では、水・衛生・栄養支援が効果的に組み合わされ、地域の回復力向上に寄与しています。こうした取り組みは、単なる緊急対応を超えて、持続可能な発展にもつながるものです。
しかしながら、2025年に必要とされる中央サヘル地域の人道支援資金4億8,970万米ドルのうち、6月時点で集まっているのはわずか7%未満にとどまります。特に西部・中部アフリカでの活動資金は35%の減少が予想されており、ラッセル事務局長は「資金がなければ、成果を拡大することも、今ある支援を維持することも難しい」と強く訴えています。
ユニセフは国際社会に対し、今こそ子どもたちの未来を守る行動を取るよう呼びかけています。

















