豊田通商株式会社と東亜建設工業株式会社は、アンゴラ共和国南部ナミベ湾で進めてきた「サコマール港鉄鉱石輸出ターミナル修復事業」および「ナミベ港コンテナターミナル拡張事業」を2025年10月10日に完工しました。
本プロジェクトは、アンゴラ政府の港湾再建計画の一環として、2019年に締結された契約に基づき実施されたもので、長年の内戦で損傷した港湾インフラの再生と、同国経済の多角化を後押しする重要な成果となります。
今回の完工により、アンゴラ南部地域の物流効率が大幅に向上し、鉱物資源輸出および国際貿易の拠点としての地位が強化される見通しです。
アンゴラ南部の再生を支える港湾再建プロジェクト
アンゴラ共和国は1975年の独立以降、長期にわたる内戦の影響で港湾や交通インフラが著しく損傷し、特に南部地域の経済発展に深刻な影響を及ぼしてきました。
ナミベ州のサコマール港とナミベ港は、鉱物資源の輸出および生活物資の輸入において重要な役割を担っていましたが、老朽化と機能低下により、地域経済の発展を阻む要因となっていました。
こうした状況を受け、アンゴラ政府は国家戦略の一環として港湾再建計画を推進し、2019年に豊田通商および東亜建設工業のコンソーシアムと契約を締結。
2022年9月に着工した本プロジェクトは、サコマール港とナミベ港の機能回復と拡張を目的に、約700億円規模の事業として実施されました。
資金は国際協力銀行(JBIC)と民間金融機関による協調融資により調達され、日本貿易保険(NEXI)の保険が付与されています。
サコマール港の再生で鉱物輸出を再開、産業多角化を促進
サコマール港は1967年に開港し、カシンガ鉱山からの鉄鉱石輸出の中心拠点として発展しました。しかし内戦の影響により、鉱山と港の操業は1975年から2002年まで停止し、港湾設備は荒廃していました。
アンゴラ政府は鉱山再開にあたり輸出拠点の再建を急務とし、豊田通商・東亜建設工業による修復事業が進められました。
今回の事業では、鉄鉱石積込用の新桟橋(全長約520メートル)の建設と、港湾後背地の整備を実施。これにより、カシンガ鉱山で採掘された鉄鉱石の輸出が再開され、原油依存型だった同国経済の多角化に寄与します。
鉄鉱石輸出の再開は、鉱業・製造・物流など関連産業の発展を促すだけでなく、雇用創出や地域所得の向上にもつながると期待されています。
サコマール港の再生は、アンゴラ南部における経済再構築の象徴的なプロジェクトとなりました。
ナミベ港の拡張で南部物流のハブ化を実現
ナミベ港は、モサメデス鉄道を通じて内陸と結ばれる南部の物流拠点ですが、従来は岸壁の水深が浅く、大型船の寄港が困難でした。そのため、アンゴラは隣国ナミビアのウォルビスベイ港に一部物流を依存しており、輸送コストと時間の面で課題を抱えていました。
本事業では、コンテナターミナルの新設、港湾の浚渫工事、最新の荷役機械および船舶運航管理システム(VTS)の導入を行い、最大50,000DWT(3,000TEU)級の船舶受け入れが可能となりました。
これにより輸送効率が飛躍的に向上し、南部アンゴラを中心とした国際物流の自立が進みます。
また、港湾取扱量の増加による貿易活性化は、国内外企業の投資誘致を後押しし、地域経済の成長エンジンとしての役割を果たす見込みです。
完工式にはジョアン・ロウレンソ大統領も出席し、本プロジェクトの成功を国家的成果として称えました。豊田通商と東亜建設工業は今後もアフリカ諸国の持続的発展に貢献していく方針です。


















