海外で生活するアフリカ出身者から母国へ送られる「国際送金(リミッタンス)」は、いま単なる家族支援を超え、経済を動かすインフラとして重要性を増しています。
2025年に入り、送金コスト削減やスピード改善を実現するスタートアップの台頭により、アフリカの送金サービスは急速に進化しています。
例えば、海外在住のケニア人から母国へ送られる「ディアスポラ送金」が過去最高水準に達しつつあります。特に米国を中心とする送金の増加は、ケニア国内の家計支援や不動産市場、地方経済の活性化に大きな影響を及ぼしています。
本記事では、ケニア中央銀行(CBK)が発表している最新データをもとに、2025年の送金動向とケニア経済への具体的な影響、さらに制度面の変化による今後の懸念について整理するとともに、現在のアフリカ送金市場の潮流、注目スタートアップの特徴、ステーブルコイン台頭の背景、そしてこれから訪れる変化についてご紹介します。
なぜアフリカの送金サービスが注目されるのか
アフリカにおける国際送金(リミッタンス)は、いまや多くの国にとって最大規模の外貨獲得源となっており、その経済的な存在感は極めて大きいです。
サブサハラアフリカ地域では、海外在住者からの送金額が年間約574億ドル、アフリカ大陸全体では約1,000億ドル規模に達しているとされ、今後も年率約10%での成長が見込まれています。
ケニア、ナイジェリア、ガーナなどでは、ディアスポラ(海外移住者)からの送金が観光、農産品輸出、FDI(外国直接投資)を上回り、最大の外貨収入源となっている国もあります。
結果として、アフリカの送金サービス市場には高い成長期待が寄せられ、送金手段の多様化や、より効率的な送金インフラ構築の必要性が高まっています。
過去最高ペースで増加するケニアへの送金額
例えば、2025年のケニアへのディアスポラ送金は、過去最高更新が視野に入る勢いで増加しています。
ケニア中央銀行(CBK)が毎月発表する統計によると、2025年の月間送金額は4億ドルを上回る水準で推移しており、その伸びは以下の通りです。
2025年6月は4.23億ドル(前年同月比 +14%)となり、7月は4.1億ドル、8月は4.26億ドル、9月も4.19億ドルを記録するなど、安定的に高水準を維持しています。
通年では50億ドル(約7,000億ケニアシリング)を超える可能性が高く、2024年の約49.4億ドルを更新する見通しです。
また、失業対策として海外労働者の派遣を推進する政府政策が奏功し、送金増加の背景にはこうした取り組みが影響していると考えられています。
家計支援から投資まで多様化する送金用途
ケニアへの送金の約6割は米国からのもので、2025年上半期でも全体の57~58%を占めました。これにカナダ、英国、サウジアラビア、UAEなどが続いています。
送金チャネルとしては、モバイルマネー(M-Pesaなど)、銀行、国際送金サービス(Western Union、WorldRemitなど)が主流であり、近年はUSDTなどのステーブルコインを活用した暗号送金も注目されています。
送金は国内において、食料品や日用品の購入といった家計支出、子どもの学費や寮費などの教育支援、医療費や家賃の支払い、不動産投資、小規模ビジネスの資金など多岐にわたって活用されています。
特に地方部では生活を支える重要な収入源となっており、高齢者や女性が受取側になるケースも多いことから、ジェンダーおよび世代間の観点でも重要な存在です。
さらに、海外送金はケニアの外貨獲得源として最大級の規模を誇り、2024年にはGDPの約4%を占めました。Business Daily によれば、2015年以降、ディアスポラ送金は観光、FDI(外国直接投資)、茶やコーヒーなどの輸出を上回る最大の外貨収入源となっていると報じられています。
米国の新税制度がもたらす今後のリスク
一方で、2026年1月から米国で導入予定の「送金税(1%)」は、ケニアにとって逆風となる可能性があります。
同制度は「麻薬・人身取引の資金流入抑制」を目的としており、米国籍者には一部免除があるものの、非商業目的の国際送金が対象となる見込みで、多くの家庭に追加負担を生じさせる可能性があります。これにより、非公式チャネル(仲介者による現金手渡しや暗号送金)への移行が進む懸念もあります。
加えて、ケニア政府が推進する「海外就労促進」や「金融インクルージョン戦略」にも影響が及ぶ可能性が否定できません。
こうした状況の中、政府は送金先の多様化(カナダ、UAE、欧州など)や Diaspora Investment Platform の整備を通じて、「生活費支援中心の送金」から「生産的投資としての送金」へ転換を図る動きを進めています。
また、ステーブルコインやフィンテックを通じた低コストかつ迅速な送金ルート整備は喫緊の課題となっており、制度リスクに備えながら持続的な送金モデルを構築できるかが今後の重要な焦点といえます。
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