株式会社鳥取再資源化研究所モロッコ現地法人”Tottori Resource Recycling Morocco S.A.R.L”でインターンシップをしている、上智大学の則友雄磨です。第3回は、モロッコ農業の水に関するテーマです。日常で水に対して感じたこと、政府の農業用水不足への取り組み、生産者の方の対策をご紹介します。

水が日本ほど自由に使えないと感じたこと

乾燥地帯であるZagoraという地域に行ったときに、日本と水の使い方が異なると感じたことがありました。滞在した宿泊施設のシャワーには、シャワーを出しっぱなしにしないように!といった張り紙が貼ってありました。

また、スイカ生産者のイブラヒムさんのご実家に伺った際、お母様がアチャイ(モロッコのお茶)とお菓子でおもてなししてくださいました。お母様はアチャイのコップを洗うために、流しは使わず、お盆に水をため、その少ない水を繰り返し使ってコップをきれいにしていました。

日本で、シャワーを出しっぱなしにしたり、洗い物の際も水を出しっぱなしにしたりしている自分にとって、水が貴重であるということを感じるきっかけになりました。

水不足解決に向けた政府の取り組み

画像①:貯水池

スス・マッサ地方農業開発公団の方に水不足についてお話を伺うことができました。スス・マッサ地方はモロッコ南部に位置し、国内の他地域と比較しても農業用水不足が深刻な地域です。現在、生産者はダム水と地下水から取水をしています。降水量が国内他地域より少なく、地下水位が年々深くなり、その度に更に深く掘ってポンプで取水しています。

大西洋に面したこの地域では、灌漑用水や飲料水確保のために海の塩水を取水し、脱塩処理を行い淡水化する「海水淡水化プラント」の建設に向けた動きが進んでいます。海水淡水化プラントを設立することで、これまでダム水と地下水の2つだけであった取水方法に新たな水の調達手段が加わります。

一方で、海水淡水化プラントによる淡水の提供予定価格が、従来のダム水や地下水による方法と比べて高くなる見通しです。

海水淡水化プラントの建設に向け、生産者の方たちに事前に合意いただくことが行われています。トマトやインゲンなどの栽培に、どれだけ水が必要か、またどれだけ足りないかを数値で示すことで、合意形成を図っています。また、同時にメディアなどを活用して、水不足はモロッコ国民全体で頑張らなければならない問題であると、啓蒙活動も行っています。

生産者の立場から水問題を考える!

先日Agadirでトマトなどを中心に手掛ける大規模生産者のロイックさん、その会社のナツメヤシの種苗生産を手掛けるムニールさんを訪問しました。ロイックさんの圃場では、トマト栽培とナツメヤシ栽培に、既にポーラスαを導入していただいています。さらに、ブルーベリー栽培にも導入いただくことになりました。

ロイックさんは、今後の水不足、水価格上昇を見通してすでに対策をとっています。ロイックさんの話を聞いて、生産者には水不足・水価格の上昇への対策は一つでないことがわかりました。

1) 節水製品の導入

 

①点滴灌漑

点滴灌漑

節水をする技術としてモロッコでは”点滴灌漑”が挙げられます。これまでに訪れた10か所以上のすべての圃場で点滴灌漑を採用していました。点滴灌漑は、小さな穴の開いたホースを畝に設置し、ホースの小さな穴からポタポタと水を与える灌水設備です。作物の根の周りにピンポイントで効率的に水を与えることがで、節水ができます。

②ポーラスα

ポーラスα

当社のポーラスαも節水をする技術の一つです。ポーラスαは、土壌に混ぜることで、ポーラスαが水を貯め、土壌の保水性を向上させます。水の地下浸水を抑制し、従来の50%程度の灌水量で生産物を栽培することができます。

③吸水性ポリマー

農業での節水では、吸水性ポリマーも活用されています。土壌に混ぜると吸水性ポリマーが水を吸収し、土壌の保水性を高めることで、節水が実現できます。一方で、長期利用をすると、ポリマーがジェル化し、吸水性が低下することが課題とされています。

2) 生産物の変更

画像④:現場で情報収集する様子
写真:現場で情報収集する様子

生産物を変えることも水不足への対策の一つです。ロイックさんは、トマトなどの野菜生産を行っていますが、水価格の上昇に備え、比較的少ない水で栽培できるブルーベリーの生産を始めていました。また、ブルーベリーは、高付加価値生産物であるということもあり、水の価格が上昇してもコストを回収できることを見込んでいます。

今回、生産者は、水不足に対して多くの選択肢を持っていることを知りました。ロイックさんの会社のナツメヤシの種苗生産場を訪れた際にも、吸水性ポリマーを使った節水技術が話題になりました。ブルーベリー以外にも、水をあまり使わず栽培できる生産物の導入を始めている生産者もいます。

当社製品を生産者に導入していただくためには、製品の利点、利益情報では十分ではなく、市場全体の情報収集を行い、生産者の課題に対して、当社製品がどのように貢献できるかを提案できることが必要だと感じました。

同時にそれを言語や文化の違うモロッコでやるという難しさを感じています。まず現地の言葉でコミュニケーションが取れること。加えて、可能な限り現場に行き、生産者の置かれている環境や状況を理解すること、たくさん話をしてビジネスを超えた生産者との信頼関係を築くことが重要だと学びました。

過去記事はこちら!

言葉の壁を乗り越えろ!モロッコでインターンに挑戦する大学生が経験した挫折と乗り越え術!

学びは現場にあり!一緒に農業をして分かった、モロッコの農家の特徴と課題!~第2回~

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鳥取再資源化研究所
廃ガラスを活用した発泡ガラスの製造、開発、販売を手掛け、水資源や食料など地球規模の課題解決を通じ、次世代に受け継いでいくことを目指している。アフリカではモーリタニア、セネガル、ケニアにて実証試験を実施。現在は、モロッコにて乾燥地での節水型農業の普及に取り組んでいる。