リベリアの手掘りダイヤモンド採掘の実態!
2016年10月~11月と2017年2月~3月、私達はリベリア現地スタッフと共にリベリア西部の採掘地域を訪問し、手掘りダイヤモンド採掘権保有者・採掘労働者・彼らの家族にアンケート調査を行い、採掘現場を視察しました。
採掘権保有者の直近1年間の年収の中央値は1,044米ドル、採掘労働者の年収の中央値は300米ドルでした。採掘権保有者がこの中から採掘活動にかかる費用を捻出しないとならないことを考えると、これではやっていけません。
そこで、サポーターと呼ばれる人に、採掘労働者の食事や採掘に使う道具等の費用を出してもらいます。採掘労働者達は日々の賃金をもらっておらず、ダイヤモンドを見つけた時だけ利益の一部を報酬としてもらいます。
サポーターは採掘費用を支援した見返りに、その採掘現場で採掘されたダイヤモンドの権利を主張し、自分の言い値でダイヤモンドを買い取ります。採掘権保有者や採掘労働者は、ダイヤモンドの価値の評価方法を知らず交渉もうまくないため、サポーターが「このダイヤは色が悪い」「透明度が低い」と言うと、それに反論することができません。
つまり彼らは、収入が低い→サポーターに頼る→買い叩かれる→適正利益を得られない、というサポーター依存の悪循環に陥っているのです。
そしてこの「適正利益を得られない」つまり貧困に陥っていることが、ダイヤの密輸や闇市場への流通を助長しています。ダイヤモンドを正規市場で取引する、つまりダイヤモンド原石が闇市場に流れ紛争の資金源になることを予防するため、キンバリープロセス認証制度という国際的な制度が存在します。ダイヤモンド産出国は、当該ダイヤモンドが紛争の資金源になっていないことの証明書をつけて、ダイヤモンド原石を外国に輸出する決まりになっています。
国の中でダイヤモンドの流れをコントロールするため、採掘権保有者はダイヤモンドが見つかったら、政府ダイヤモンドオフィスにダイヤを登録し、その後ダイヤを販売する時、登録時にもらったバウチャーをブローカーに渡すことになっています。ブローカーはダイヤ販売時、バウチャーを輸出業者に渡し、輸出業者はそのバウチャーを政府に提出し、輸出時に必要な証明書を受け取ります。
しかし、採掘権保有者の多くが採掘権を更新する費用を捻出できないため、採掘権を更新せず違法な状態で採掘活動を続けています。政府ダイヤモンドオフィスでは登録受付時に、登録者が有効な採掘権を持っているかどうかを確認するので、有効な採掘権を持っていない時に発見したダイヤモンドを登録しに行く人はいません。
つまり、そのダイヤモンドは闇ブローカーに流れます。つまり、貧困→採掘権を更新できない→違法採掘→ダイヤを闇ブローカーに販売→密輸という構図になっているのです。
私たちは何カ所かの政府ダイヤモンドオフィスを訪問したのですが、ダイヤモンドを登録しに来ている人を一度も見かけませんでした。また、過半数の人が有効な採掘権を持っていないことを考慮すると、リベリアで採掘されたダイヤモンドの多くが密輸されていると推察しています。
さて、密輸されたダイヤモンドはその後どこに行くのでしょう?密輸なので、統計をとったり追跡をするのは難しいのですが、911のテロの資金源となっていたという報道があります。ダイヤモンドは換金性が高いことから、テロ組織やマフィアの資金源となっていても何ら不思議はありません。
ダイヤモンド・フォー・ピースがこれから開始予定のフェアなダイヤモンドを実現するプロジェクトでは、労働者の組合化、組合を通した能力向上による収入の向上、そしてダイヤモンドの正規市場への流通を促進します。