2018年にクレディスイスより発表された「Global Wealth Report」によると、この年に世界の富の総額は317兆ドルに達した。主にアメリカが占める北アメリカ地域、ヨーロッパ、主に日本、中国が占める東アジア地域の世界経済の3極に、このうち90%以上が集中している。南半球の国では、世界の50%以上の人口を占めているにも関わらず、富は5%以下しか有していない。アフリカ全体では世界の1%以下でしかない。(1)
- 表1:2017-2018の地域ごとの家計の富の変化
アジアとアフリカの成長の違いとは!?
アフリカ大陸は急速な人口増加を遂げており、2050年には現在の2倍以上の25億人になることが予想され、25歳未満の若年層は8億4000万人にものぼる。(2)
20世紀後半と21世紀の最初の20年間は、アジアの急速な人口増加と経済成長によって世界は特徴付けられる。 日本に始まり、アジアの虎と呼ばれる香港、シンガポール、台湾、韓国や、より急激に成長している中国、多くのアジア諸国は、人口ボーナスをうまく活用し、急速な産業化や経済成長に弾みをつけることに成功した。
この成長に伴い、アジア地域での貧困課題の解決も進んだ。この成長規模・スピードは人類の歴史のなかでも未曾有のものであった。(3)
ニューヨークタイムズの最近の記事では、米国よりも中国で、より世代間移動が多く、格差の幅は小さく、そしておそらく最も重要なことだが、国民の中でポジティブな見方が広まっていることを示唆している。(4)ほとんどの経済指標は、世界経済と富の成長の軌跡が米国と西ヨーロッパからアジアにシフトしたことを明確に示している。
IMFは同様に、インドの経済成長率が2018,2019年には7%を超えて、中国経済を追い越すと予測している。またこの経済成長と同時に、インドでは妊産婦死亡率、社会的流動性、極貧、失業率などの社会経済指標においても明らかな改善を伴っている。(5)
一方、アフリカ諸国は急激な経済成長にもかかわらず、社会経済指標の一貫した改善を示しておらず、一人当たり所得増加は急速な人口増加に追いついていない。
2018年に発表された世界銀行の調査によれば、アフリカのほとんどの国で貧困率は低下しているものの、極度な貧困の人口は1980年よりも現在の方が多く、2億人以上が1日1.25ドル未満で生活している。(6)
同様に、ブルッキングス研究所の調査によれば、ナイジェリアはインドの貧困人口をすでに追い越している。これは7倍の人口の差を考えると衝撃的な統計と言える。(7)
アフリカの経済発展の道は閉ざされた!?
- 表2:アフリカ各国の平均年齢
ほとんどのサハラ以南のアフリカ諸国の平均年齢は20歳以下であり、大陸全体の平均はわずか19歳である。(8)
収入の停滞、貧困層の増加とともに、急速に成長する若いアフリカ大陸のもとで、多くの政策担当者や統計学者、経済学者は大陸全体の市民不安や政治不安の増大を警告している。
Ha-Joon Changをはじめとする著名なエコノミストの一部は、西洋諸国とアジア新興国が辿ってきた経済発展への道筋がアフリカ諸国には閉ざされてしまった、と主張している。
これは、2つの要因が強く関連している。
1点目は、IMFやWTOのような組織による積極的な政府介入。2点目は東アジアで見られたがアフリカでは未だ進まない、労働集約的な工業化プロセスから技術革新・機械化による効率化である。(9)
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