高橋先生から見たケニアの過去と今!
― 高橋先生が初めてケニアに来てからを振り返ると、今のケニアはどのように映りますか
私が初めてケニアに来た1980年はクーデターで政治が荒れる前でした。その時は若くて可能性にあふれる国と感じました。その後は民主化で衝突が起こり、町も汚くなり、抱いていた期待とはかけ離れたものになってしまった。
当時はアフリカの一部の役所では公共料金が支払えず、機能不全に陥っていたところもあると聞きました。高度成長が始まる前の1990年代では新しいビルが次々に建つということもなかったし、暗い時代だったといえます。
― その後2000年代に入ってケニアで高度成長が始まります。今のケニアを高橋先生はどのように見ているのでしょうか。
お金が大量に流れ込んでくることは悪いことではないですよね。ただ別に構造的な問題があって、やはり工業化の進展が進んでいないということです。
インフォーマルな部分の製造業では活発になっているところもありますが、フォーマルな部分では高い賃金もあって製造業が伸びておらず、工業化が後退している側面がある。それを補う形でサービス業が成長しているし、一次産品価格の高騰でお金が流れ込んでくる。
しかし、それがどれだけトリクルダウンするか、人々に広く分配されているかが問題です。アフリカの人々には活力があって、もし秩序立てられて一つの方向に集中するならば状況を変えられると期待していますが、実際にはそうした方向には向かってはいないですよね。
一つの問題としては、行政がきちんと機能していない。公共サービスがきちんと提供されているならば、市民は納税の義務がある。ここで必要なことは確実に徴税を行い、それが透明な制度の下で市民に還元されることです。
しかし、ケニアの場合は歴史的に一部の民族や階級の人間に集中的に公共サービスが提供されてきた。こうした現状を乗り越え、一般大衆の人々に分け隔てなく徴税と公共サービスを行う体制を作り上げることが国全体の発展のために必要なことだと思います。
― 発展の恩恵を多くの人に広げていかなければならない、ということですね。本日はインタビューを受けていただいてありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございました。