『車』からみる東アフリカ市場

―アフリカが市場として認知されたこと、そこから実際にアフリカで事業を展開することの間には高いハードルが横たわっているように思われます。

進出企業が収益ベースで(現地事業活動の)コストをまかなえているかというとまだまだ難しく、その点がアフリカビジネスにおける最大の難関といっていいでしょう。拡大しているとはいってもまだ市場規模が小さいため、ケニアの場合でも人口4,700万人、1人当たりGDPが1,700ドル程度。

人口と一人当たりGDPの兼ね合いからみると、アジアでいえばカンボジア、ミャンマー、バングラデシュなどが進出先の比較対象として挙げられていますし、アジアでは隣国により豊かな国や市場がある。東アフリカだとケニアが最も豊かで隣国はそれよりも低い経済水準にある訳です。

ケニアの新車販売台数の例をみると分かりますが、2015年がピークで2万台程度、去年は1万1000台弱と半分近くに低下しました。中古車を含めた全体数でみても10万台程度の水準です。モータリゼーション(自動車の大衆化、多くの庶民が自動車を持つようになること)が始まると言われる一人当たりGDP3,000ドルという水準と比べると、まだまだ市場として魅力的になるには時間がかかる。

ざっくり考えると十年弱程度は時間が必要なのかもしれません。タンザニアで1,000ドル、ウガンダで750ドル程度なので、追随して市場が拡大するにはそれ以上に待たなければいけません。

―そうした状況であるにも関わらず、ケニアではいすゞやホンダを始め、日系・外資系グローバル企業が車や二輪車といった組み立て工場を新たに開設、拡張しています。この動きはどういった背景から理解すべきでしょうか。

元々車の需要が大きいことが前提にあります。新車の販売台数が減っても中古車を含めた総登録台数は減っていません。新車販売台数の減少は上限金利のキャップをかけたことにより、中小企業が事業のためお金を借りて新車を買うという流れが狭められたことが大きな要因ではないかと思われます。しかし、車への需要自体は拡大しているため、現地生産・組み立てに踏み切ったと捉えるべきでしょう。

―車の販売台数はその国の経済を見る上で重要な指標です。東アフリカでは車や二輪車はタクシードライバーに転身することで簡単に現金収入が稼げるツールです。販売が好調な理由の背景には、Uber(米国発の自動車配車サービス)に代表されるように、お金持ちが車を持たない者のためのレンタル目的で購入し、個人に貸し与えて使用料を稼ぐためではないか。つまり、必ずしも民間レベルで広く個人が購入している訳ではなく、資産がある一部の人間による、限られた範囲での消費拡大が起こっているのではないかと考えています。

近年のスタートアップの動向を参照すると、また違った見方があるでしょう。アフリカでは南ア、ナイジェリア、そしてケニアがスタートアップの集積地として新たな事業が次々と生まれてきています。

先ほどの話でいえばUberドライバーは会社に所属していない個人タクシーです。現金商売のため原則的に個人与信が付与できなかった。しかし、テクノロジーによってお客様からの利用履歴が電子データで残るようになると、乗車回数、一回当たりの料金、運転手のレーティングといった情報が蓄積されてドライバーの良し悪しが判断できるようになりました。

そして、この情報を元にUberが地元銀行や豊通オートマ―ト社等と組み、低金利の融資が行われるようになりました。こうしたシステムがさらに整えられると、消費の拡大も一般層に及ぶことになるでしょう。

―テクノロジーとファイナンスの発達により個人の優良顧客にリーチしやすくなったことで、一般層にまで消費拡大が広がることが期待されているということですね。

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長谷川 将士

長谷川 将士

株式会社グラスルーツウォーカーズ代表取締役CEO
二十歳からケニアでフィールドワークを続け、大学院時代に行った調査が共著論文として書籍に掲載されています。専門はアフリカ政治経済学(特に紛争及び市民暴力)。最近は中間層論と経済成長論に関心有り。日本のアフリカ報道と学術研究やフィールドワークから見えるアフリカ像が大きく異なることに疑問を抱き、エビデンスに基づいた現場発信型メディアを立ち上げるべく、ケニアで奮闘しています。弊社ジャーナルサイトは平日、正午に更新していますのでご一読ください。