前回のルワンダ・ナッツ・カンパニー笠井さんに引き続き、今回はルワンダで会社を経営されている木下一穂さんに直撃インタビューをしてきました。
ではさっそく参りましょう。
プロフィール
木下一穂(きのした かずほ)
明治大学農学部卒業後、飼料会社に3年半勤務。
その後千葉県の農家でトマト栽培に2年間従事。
青年海外協力隊として2013年1月~2014年12月まで活動し、2015年にルワンダに戻りルワミッツ(クッキー、はちみつ、ジャム等の販売)を設立。
通称トマトさん。
協力隊の訓練所時代に、トマト農家で働いていた経験から付いたあだ名。
今でもルワンダ隊員からは「トマトさん、トマトさん」と呼ばれている。
インタビュースタート!
―飼料会社を辞めて、トマト農家で働き始めたのは結構大胆な転身かと思いますがどうしてトマト農家で働き始めたんですか?
うーん、どうしてでしょうね?(笑)
―トマトにはこだわりがあったんですか?
特にありません。トマトは面白いなと思ってましたが、単純に農業をやりたいなという気持ちがありました。
実際に協力隊時代も、ビニールハウスでトマトを栽培しているコーペラティブ(農業組合)をサポートしていました。
―ちなみに、トマト農家の後協力隊という選択をしたのにも何か理由があったんでしょうか?またルワンダは希望していた国だったんですか?
それもあんまり考えないで来ちゃったんですよね。(笑)
トマト農家で働いていて、次のステップを考えたときに自分は日本に土地を持っている訳ではないし、ただ日本で農家をするのも面白くない。そこで海外という選択肢が出てきました。
ただ、農家の出でもないし海外にずっといた経験もなかったので協力隊かなと。
ルワンダは希望した国でした。その国の全体を見るために小さい国ということにこだわりがありました。
実は、はじめは第一志望がマリだったんです。水も電気もないし、なんか暑そうだし。
そういう環境を求めていた。
ただ安全上の理由からマリに行くことができなくなってしまいました。
そこでなぜか心変わりしちゃったんです。安全で、水も電気もある国がいいなって。(笑)
―ルワンダで起業しようと思ったのはいつごろからですか?
活動を始めて1年後くらいに、漠然と考え始めました。
ただ、今作っているクッキーやはちみつ、ジャムを作ると決めたのは会社を始めてからですね。
―えっー!? じゃあ協力隊後にルワンダに帰って来たときは決まってなかったんですか?
そうですね。ルワンダで起業をしようとは考えてましたけど、なんとなくはちみつが頭にあったくらいです。
ルワンダに来てみて、過去の協力隊隊員がサポートしていた人がはちみつやクッキーを作っていた経験があったので(彼は今のビジネスパートナーになっている)、その知識を使って会社を始めました。
今はそのパートナーを含めてルワンダ人7人と自分の8人で会社を回しています。
―パートナー以外の6人の従業員はどうやって選んだんですか?ルワンダで従業員として働く人を見つけるって結構難しいですよね?
協力隊時代の知人や、パートナーの友達です。
まずは1人良い人を見つけるというのが大事だと思います。
その人が良い人だと、その友達も良い人で、その取引先も良い人だったりして、すべてがうまく繋がっていくんです。
また採用に際しては何か自分なりにやりたい事を持っているということを重視しています。
前日に突然クッキーの大量注文が入ってきたりして、1日20時間とか働かなくちゃいけなくてもちゃんと付き合ってくれるんです。
なんなら深夜0時くらいになったから自分が「そろそろ引き上げようか」といっても「いや、もっとやろう」って。(笑)
お金のためだけに働いてたらここまでやってくれないと思います。
―それにしてもモチベーション高いですよね?従業員のモチベーション維持に特別に気を使っていることはあるんでしょうか?
モチベーション管理というほどのかっこいいことはしてないんですけど、今コアメンバーである3人のルワンダ人と一緒に暮らしてるんですね。
なので一緒に寝て、一緒のもの食べて、一緒に頑張っていこうという雰囲気になっていることが大きいと思います。
―話は変わりますが、今の会社の業務内容や商品について教えて頂けますか?
はい。まずははちみつです。
はちみつは自分の土地で栽培していて、収穫期は2,3月と8,9月です。
それに加えて、支援をしている2つの農家から仕入れてプレス機で絞るというのがおおまかな流れになります。
商品ははちみつ、はちみつジンジャー、はちみつレモンを販売しています。
次にジャム。
これはパッションフルーツとツリ―トマトを販売しています。これも現状は近くの農家から仕入れていますが、自分の土地でも育て始めています。
クッキーに関してはバナナクッキー、チョコレートクッキー、ピーナッツクッキーを販売しています。
クッキーはもともとパートナーが作る知識があったということで始めたんですが、これが結構好評で今では売上の6割くらいを占めています。はちみつジャムで4割くらいですね。
―じゃあ今はクッキーに力を入れているんですか?
そういう訳ではないですね。
実際に何がどこで売れるかというのは作ってみないとわからない部分がありますし、いまは少しずつ販売先を広げていく状況なので、何かドカンと売るというよりは、試してみて売れるモノを作っていくというイメージです。
結構こっちでこだわりを持って作って「これはイケる」というのが反応悪かったり、ここは難しいかなというのが意外に売れたり。
例えばポテトチップスも作っていて、いろいろパウダーを買って来て「カレー味」とか作ってみたんですが結局評判が良いのは「しお味」だけだったりして。
―なるほど。今は試行錯誤でやられていますが、木下さんの起業家としての最終的な目標は何ですか?
ルワンダで世界に通用するものを作りたいです。
これは隊員時代にできなかったことでもありますし、このまま愚痴を言って終わるのは嫌だったんです。
ルワンダ人は依存体質という傾向もありますし、周りの人もルワンダは何もなくてビジネスは難しいみたいなことを言う。
文句を言うのは簡単だけど、自分なりにやれるだけやってみたかったというのはあります。
ただ、世界で売れるものをやみくもに売るのではなく、ルワンダ人が好きな、ルワンダ人らしいものを作りたいです。
はじめはチョコレートクッキーを作るのも抵抗があったんです。というのも、原材料がルワンダ産じゃないから。
でも、日本の蕎麦だって必ずしも日本の原材料を使って作っているわけではないけど独自の食文化として根付いている。
なので少し考えを広めて、とにかくルワンダ人が独自の食文化として気に入ってくれるものを作る。ビジネスのことを考えるのはその後でも良いかなと思ってるんですよね。
さらに欲を言えば、最終目標としてルワンダ人の中から人材を輩出したいなと思ってます。
ルワンダ人で今は評価されてない人が、評価されるようにしていきたい。
―木下さん自身が、ルワンダでの約1年の経営者経験を経て変わったことはありますか?
周りの人の協力って本当に必要で、感謝の気持ちを忘れちゃいけないなと強く思うようになりました。
あとは、色んな人を認めることが出来るようになりましたね。
昔は結構人の好き嫌いがあったんですけど、みんな良いところがあるし、自分の価値観に合わないからって排除してしまうってのは良くなくって、色んな人のことを知ろうとするようになりました。
だから、例えば家族が一番の人がいても「まあそういう人もいるよな」と受け入れることが出来るようになりました。
■インタビューを終えて
木下さんは一見ガツガツした感じではなく、最初に質問したときは「なんとなく来ちゃったんです」「なんも考えてませんでした」なんて言いつつも掘り下げていくとやはり信念や強い思いのある方でした。
変にその信念を全面に押し出さないからこそ近づきやすく、良い従業員が集まってくるんだろうなと感じました。
最後に木下さんはビジネスをやるにしても、「まずは自分や自分の会社の商品を好きになってもらわなければならない。まずはファンを増やしていくことが重要だ」とおっしゃってました。
話してみて、木下さんであれば今後ファンをどんどん増やしていくことが出来るんだろうなと、既にファンになった私は感じました。
ルワンダに来た際は是非「ルワミッツ」の商品をお試しください!