FAO本部で開催された食料安全保障を考える国際会議をレポート!アフリカでも”若者×農業”で新たな挑戦を!

2017年10月9日〜13日、イタリア・ローマの国連食糧農業機関(FAO本部)において第44回食料安全保障委員会(CFS44)が開催されました。これは毎年、10月16日の世界食料デーの前後に開催され、世界各国の政府代表団、国際機関、企業、NGOを中心とする市民社会など、さまざまな立場の人々が集まって食料をめぐる課題について話し合います。ハンガー・フリー・ワールドはNGOとして職員を派遣し、食料と栄養をめぐる世界の最新情報を収集しました。今回は、その内容についてご報告します。

食料安全保障委員会がFAO本部で開催!

FAO本部。今年のテーマが電光掲示板にうつされている
写真:FAO本部。今年のテーマが電光掲示板にうつされている

10月9日から13日にイタリア・ローマの国連食糧農業機関(FAO本部)で第44回食料安全保障委員会(CFS44)が開催されました。これは毎年、10月16日の世界食料デーの前後に開催され、世界各国の政府代表団、国際機関、企業、NGOを中心とする市民社会など、さまざまな立場の人々が集まって食料をめぐる課題について話し合います。

今回、9月15日にFAOを含む国連機関が発表した「世界の食料安全保障と栄養の現状2017」で、これまで10年以上減少を続けてきた飢餓人口が2016年に再び増加に転じ、前年度比3800万人増の8億1500万人になったことが報告されました。

世界の共通目標である持続可能な開発目標(SDGs)が掲げる16の目標の一つ、ゴール2は2030年までに「飢餓をゼロに」を目標にしています。昨年動画で一躍有名になったピコ太郎氏が歌ったことでも、ご存知の方が多いと思います。その目標に向けて後退してしまった現状に対して、世界は何をすべきなのか、CFSではさまざまな議論がなされました。

増えてしまった飢餓人口、その原因と対策

本会議場の様子
写真:本会議場の様子

CFSの会場の随所で、飢餓人口が増加に転じたことに対しての危機感をひしひしと感じました。開会式でもこの状況をさまざまな人々が話のなかで取り上げていました。

なかでも印象的だったのが、世界食料計画(WFP)の事務局長デイビット・ビーズリー氏の言葉です。「(今世界がこのような状況になっているのは)you don’t blame anyone but ourselves(自分たち自身以外の誰のせいにもできない)。我々はもっと効果的に仕事をしなくてはいけない」と最初に言い切ったことです。昨年までのCFSで、低身長、低体重、栄養の偏りからくる肥満などの課題に対する各国でのさまざまな取り組みが報告されました。それらが成果を上げているのに反して、飢餓人口が増え続けている主な原因は「紛争だ」とCFSは分析しています。

すでに今年に入ってからも南スーダンで飢饉が宣言され、ナイジェリア北部、ソマリアやイエメンでも飢饉の兆候に警鐘が鳴らされています。FAOでは現在19の国が危機的状況にあると指摘。いずれも紛争と暴力がはびこっている国です。それに加え、干ばつなどの自然現象が追い打ちをかけているのです。特に南スーダンでは、干ばつと洪水に繰り返し襲われ、イエメンでは洪水やサイクロンが大きな影響を及ぼしています。

解決策として紛争を終了させることはもちろんですが、食料問題に携わる関係者としてのアプローチとして、国際社会が食料システムへ適切な投資をする、ということが挙げられています。雨水に頼る伝統的な農業を近代的なシステムを導入することによって強靭にし、生産性を上げ、さらに農作物を流通ルートに乗せることで、食料を確保と同時に農業からの収益を改善していこうというものです。

その一方で、大規模な多国籍企業が種苗や化学肥料、殺虫剤などを寡占化しつつあり、この企業にとっての利便性と効率の追求が、農業従事者や環境にとって多様性の損失につながっているという懸念が生まれています。限られた品種の作物栽培は、天候リスクが分散する多品種栽培に比べて天候の打撃を受けやすく、化学肥料や殺虫剤を使わなければならない種苗の強制は農業収益の圧迫につながり、環境への負荷も報告されているからです。

CFSと農業の商業化問題への対応

会場ロビーに配布された資料
写真:会場ロビーに配布された資料

このような状況に対して、NGOを中心とする市民社会は昨年から対応を求めており、今年政府関係者や企業関係者なども参加する公式サイドイベントで、正式に議論することができました。

ここでは、1、作物の多様性に何が起こっているのか? 2、農業の種苗や殺虫剤などは誰がコントロールしているのか? 3、水の使用について我々は疑問視しないで良いのか? 4、誰が土壌を守るのか? 5、誰が食料を廃棄しているのか? など主催の市民社会が疑問を投げかけ、CFSとしての対応を求めました。

世界中の農家は全人口の7割にも及び、世界に食料を供給しているにもかかわらず、工業化されたフードチェーンは世界の土地や水などの農業関連の資源を少なくとも75%も使って生産しています。そのうえ、二酸化炭素を大量に排出しているのにもかかわらず、世界の3割に満たない人にしか食料を供給できていません。

このサイドイベントでは、ドイツ外務省担当者やCFS議長もパネリストとして登壇。市民社会から投げかけられた問いをもとに議論が活発に行われました。各国からは、食料廃棄の削減やオーガニックの推進、工夫ある近郊農業などの取り組み事例も紹介されていました。この議論の行方を握るのはインド、ブラジル、中国、メキシコのような新興国であり大きな農業国であるということも、参加者から指摘されていました。

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