世界中で流行している新型コロナウイルス。アフリカ地域でも日々感染者が増え続けています。
国連のレポートによると、医療体制の脆弱なアフリカ地域では、新型コロナウイルス感染の拡大に伴い、死者が少なくとも30万人、極度の貧困に陥る人が2900万人という試算も出ています。
今後のアフリカにおける感染はどうなっていくのか、現地では何が起こっていて、どのような対策が必要なのか、関心を寄せているものの、メディアからの断片的な情報からはなかなか実情が見えてこないと感じている方も多いかと思います。
アフリカクエストでは、『アフリカでの新型コロナウイルスの最前線』と題してアフリカビジネスラボ スペシャルを2020年5月8日(金)に開催し、ケニアで臨床検査ラボを運営している嶋田庸一さんをお招きして、ケニアのコロナウイルス蔓延状況と対策の現状をお伺いしました。
アフリカの新型コロナ感染の現状
2月25日にアルジェリアでアフリカで初めてのコロナ感染患者が報告されたことを皮切りに、新型コロナウイルスがアフリカで猛威を振るっています。
6月15日時点では、アフリカでは233,732の感染ケースが確認されており、死者は、6,253人に及んでいます(1)。
WHOによると、長距離トラック運転手や違法入国者による越境的な感染が起きている一方で、感染ケースは大都市に集中しており、地方で比較的にまだ影響を受けていないそうです(2)。
ケニアの新型コロナ感染の現状!
ケニアでは、2020年3月12日に初めての感染者が確認されたと、ケニア保健省が発表しました(3)。
それ以降、感染者は増加を続け、現在(2020年6月15日時点)では、感染者数3,594人・死者数100人を記録しています¹。
医療対応としては、新型コロナウイルス対応で使えるICUベッド数は,現時点でナイロビで38床,ナイロビ以外で32床と極めて限定的であると言えます (4)。
新型コロナへのケニア政府の対応!
ケニア政府は、新型コロナ感染拡大を受けて、様々な動きが動きあります(2020年6月6日時点)(5)。
3月27日に午後7時から翌朝午前5時までの夜間外出禁止令を同月7日より午後9時から翌朝午前4時までと緩和しました。
他にも、都市間の移動禁止に関しても、一部都市間は解除されたもののまだ、ナイロビやモンバサ、マンデラの主要都市と他の地域との移動は継続して禁止されています。
また、国際商用定期便の運行は,無期限に引き続き停止すると発表しました。
感染者は増加している、一方で経済再開へのプレッシャーは強く、苦悩する様子がみてとれます。
アフリカにおける新型コロナの最前線!
2020年5月8日(金)に行われたアフリカビジネスラボSPではケニアで新型コロナ感染対策に立ち向かわれているConnect Afyaの嶋田さんにをお伺いしました。
■ 嶋田さんは今のケニアにおけるコロナ感染をどう見ていますか?
ケニアには2つの世界が広がっています。首都ナイロビでは、経済発展が進み栄えているエリアは高層ビルが建ち並んでいます。
一方、一度そこから数キロ歩くと、スラム街が広がっています。スラム街では、人口密度が高く、衛生環境も非常に悪いです。
こういう場所で感染が広がると大惨事が怒るのではないかと懸念しています。
UNECA によると、アフリカ全土の死者数は、コロナ終息までにベストケースで30万人、最悪のケースで300万人に上ると言われています。
ここで、ケニアの話に戻すと、4月までは、感染は富裕層・中間所得層のエリアが中心でした。
言葉を選ばずに言うと、コロナは「お金持ちの病気」と言えました。しかし、4月下旬からこの状況が変化し、低所得者居住エリアにも感染が広がりつつあります。
検査に関して言うと、検査数は、人口10万人あたり50検査しかできないケニアを含むアフリカ地域は圧倒的に少ない状況にあります。
また、医療機関のキャパシティも低く、治療できる体制もないと言えます。
もちろん医療キャパシティを増やそうという動きはもちろんありますが、感染拡大に追いつけるのかという議論はあります。
■ ケニア政府は、どういった対応を取っているのでしょうか?
この対応として、ケニアの保健省を中心にコールセンターを設置しています。
コロナ感染の疑いのある潜在患者がこのコールセンターに連絡すると、政府のRapid Response Team(以下、RRT)が現場に向かい、対応します。
陽性反応がでた場合は、隔離施設に送る形を取っています。
しかし、RRTの人数が非常に少なく、ナイロビをカバーしているチームでも10人足らずくらいだと言われています。
1日にコールセンターに数百~数千の連絡がきている中で、対応が追い付いていません。
そうすると、潜在患者の人達は、待ちきれずに市中の病院に直接行ってしまう。
この過程で、コロナウイルスが拡散されてしまっている可能性もあります。
そして、一般患者の人達は、病院に近づきたくないと、各病院の患者数が激減しているという状況にあります。
■この状況に対して、嶋田さんが取り組もうとしている新型コロナ感染対策プロジェクトについて概要を教えてください。
現状、このコールセンターがパンクしてしまっています。
そこで、我々は、対応患者の優先順位付け・検査の仕組みを作ろうとしています。
これは、潜在患者に対して、アプリ等を通じて自分の状況を検診をしてもらい、その結果に応じてグレードを分け、それぞれのグレードに対して、対応をしていただきくスキームです。
具体的に言うと、現地にあるTIBUというバイク便を運営してるスタートアップと供に、連絡を受けた潜在患者の家に行き、検体を収集、自社を含むラボへ検体送付・検査する仕組みです。
我々のパートナーのTIBUは、スクリーニングアプリ開発済みでバイク部隊を保有しています。
また、弊社は、PCR検査機器を保有し、運用実績と運用できるスタッフもいます。
TIBUと弊社の既存の仕組みを組み合わせるだけで運用がすぐ可能です。
今はラボとして、国からの検査認可を待っている状況ですので、国からの認可が下り次第、ラボとして検査が可能になります。
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