日本とスーダンのパラアスリートが対談「パラスポーツでインクルーシブな社会を!」

アフリカ支援プロジェクト「A-GOAL」と茨城県ユニセフ協会は7月4日、スポーツを通じた国際協力連続セミナーの第2弾としてオンラインイベント「パラアスリートと見てみよう!~アフリカとスポーツ~」を開催しました。

登壇したのは、スーダン出身のブラインドサッカー選手、モハメド・オマル・アブディンさんと、車いすバスケットボールの元日本代表の神保康広さん。

アブディンさんは「ブラインドサッカーは目隠しをすれば誰でもできる。車いすバスケも健常者も一緒にプレーできる。パラスポーツは究極のインクルーシブスポーツ!」とパラスポーツの可能性を語りました。

パラスポーツで皆が繋がる

日本ユニセフ協会は2018年、子どもがスポーツを楽しむ権利を保障するため、「子どもの権利とスポーツの原則」を発表。

現在、アフリカ支援プロジェクト「A-GOAL」と連携して行っている「スポーツを通した国際協力」連続セミナーは「子どもの権利とスポーツの原則」の普及を目的としています。

今回の第2回セミナーでは、セネガルでパラスポーツ支援を行う「WITH PEER」とインクルーシブな社会を目指す「くつばこ+」の協力を得て、二人のアスリートにパラスポーツの可能性について語ってもらいました。

アブディンさんは、スーダン出身。遺伝性の網膜色素変性症により視力を失いました。1998年に来日。現在は眼科薬を手掛ける参天製薬で働く傍ら、ブラインドサッカーの選手としてスポーツの普及に携わっています。

神保さんは、バルセロナ、アトランタ、シドニー、アテネと4大会連続パラリンピックに出場した車いすバスケットボール選手です。マレーシアやジンバブエでの車いすバスケの指導や、車いす製造のビジネスも手掛けるなど多彩な経歴を持ちます。

二人がこのイベントで共に強調したのは、パラスポーツが障がい者や健常者の垣根なく、皆が楽しめるスポーツだということです。アブディンさんはこう言います。

「ブラインドサッカーは目が見える人がゴールキーパーをし、目が見えない人がフィードプレーヤーをする。また相手のゴールの裏には、目の見えるガイドと呼ばれる仲間に相手やボールの位置を教える人もいる。目の見える人と見えない人が一緒にするスポーツであり、究極のインクルーシブスポーツだ」

神保さんもこういって同調します。

「私は今、車いすソフトボールの大会に来ている。プレーしているのは半分は障がい者で半分は健常者。子どもが親と一緒に参加しているケースもある。障がい者で車いすソフトボールが上手な子どもが親の尻を叩いているのを見るとほほえましい。みんなが一緒になって楽しめるのがパラスポーツの魅力」

パラスポーツとは障がい者のためだけのスポーツではなく、障がい者も健常者も同じ条件の中で行うスポーツ。すべての人に開かれたスポーツだといえます。

また同じルール、条件だからこそ、公平に競え合える場でもあります。アブディンさんはこう話します。

「一般社会は一般の人へのルールだから、障がい者は一歩引いてしまうところがある。しかし、パラスポーツは障がい者の目線で作られたスポーツ。普段気を使っている人もパラスポーツでは人目を気にせず全力で取り組める」

混ぜるアフリカ

二人のクロストークから見えてきたのが、アフリカの寛容性です。

神保さんは、JICA海外協力隊としてジンバブエで指導したときに、障がい者と健常者の壁をあまり感じなかったと話します。アブディンさんも、アフリカでは日本に比べ、障がいによるひきこもりが少ないのではないかと推測します。そのうえで理由をこう話します。

「アフリカは民族の違いや身体の強さ、経済的な違いなど障がい以外にもみんなそれぞれいろいろな弱さを持っている。だから『ひとりひとり、できることとできないことがある』という感度が非常に高い」

今回のイベントの共催団体、A-GOALプロジェクトの代表の岸さんも「アフリカは民族や言葉など違って当たりまえ。障がいも違いとして受け入れられる土壌があるのではないか」と話します。

すべての人が受け入れられる社会を実現するためにカギとなるのが、皆で一緒に生活することだとアブディンさんは言います。

「私は小さいころ普通の学校で学んでいたし、できることにはすべて参加していた。殴り合いの喧嘩もしていた。こっちも本気で殴るし、殴り返される。容赦はない。そのあと仲直りして、友達は普段通り先生が黒板に書いたことを私に教えてくれた。みんなで生活することにより、障がい者も受け入れられる環境を作る」

だからこそ、アブディンさんはパラスポーツをインクルーシブな社会にするツールにしたいと話します。

「ブラインドサッカーでは健常者の人でも目隠しをすればプレーできる。健常者も障がい者も同じルールの上で競い合い、一緒に楽しむことができる。ブラインドサッカーを使って健常者と障がい者がつながれる場を作りたい」

 

 

 

 

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