アフリカ出身の遺児学生に日本を含む世界の大学での高等教育の機会を提供してきた「あしなが育英会」は、まさにそのモデルを体現しています。
今回からスタートする本コラボ企画では、留学生たちがどんな想いで日本に来て、どのように社会と関わっているのかを、リアルな声とともに紹介します。第1弾では、あしなが育英会の活動全体像についてお届けします。
世界の遺児に届けるリーダーシッププログラム!
「あしなが育英会」は、日本国内での遺児支援で培った経験をもとに、2000年代からアフリカにも活動の幅を広げてきました。
現在の中核事業は「アフリカ遺児高等教育支援100年構想(以下、Ashinaga Africa Initiative:あしながアフリカイニチアティブ)」です。
これは、サブサハラ地域の遺児を対象に、日本を含む世界の大学への進学を通じて、将来アフリカに貢献する人物となるよう育成するリーダーシッププログラムです。
昨年2024年には第11期生7名を迎え、10年の間に累計113人の学生が来日し、全国の大学へと進学しました。
彼らはあしなが育英会の日本人奨学生とも交流しながら、学問だけでなく、アフリカでのインターンシップや課題解決プロジェクトなどに取り組みながら、リーダーシップをはぐくんでいます。奨学金に加え、リーダーシップスキルを育成するプログラムが含まれているのが、このプログラムの大きな特徴です。
ABEイニシアティブ制度との違いとは?
多くの企業が接するアフリカ人材支援のスキームとして「ABEイニシアティブ」が知られていますが、「あしながアフリカ遺児高等教育支援100年構想」の取り組みはその理念と構造において異なります。
ABEイニシアティブは主に若手行政官や企業人を対象に、日本の大学院で学んだ後に日系企業でインターンを行うことを目的とした政府主導の人材育成制度です。
一方、あしながアフリカイニシアティブは、単なる奨学金支援に留まらず、母国や地域社会に貢献する志を持つ若者を、サブサハラ・アフリカ49か国を対象に、原則として毎年各国から1名を選抜しています。
遺児の中から優秀な学生を対象に、他者への共感や利他の精神を重視し、社会を変革する次世代リーダーとしての成長を後押しする育成プログラムが特徴的です。
プログラム期間中は学生が自らの問題意識に基づいて地域課題に取り組み、解決策をプロポーザルとして発表する機会も設けています。また2か月間のアフリカでのインターンシップを必須にすることで、現地の課題に触れながらスキルだけでなく現地のネットワーク構築も行っています。
さらには日本語学習支援や日本でのインターンシップ機会の提供により、日本との相互理解を深め、両地域をつなぐ懸け橋となる人材の育成にも取り組んでいます。
このようにあしながアフリカイニシアティブは、奨学金支援にとどまらず、母国やアフリカ全体に貢献し、日本とアフリカを結ぶリーダーの育成を目指す独自の取り組みを展開しているのです。
日本社会で活躍する卒業生たち!
卒業をした学生の中には、すでに日本企業に就職したり、母国で事業を立ち上げていたり、グローバルな人材として活躍している例もあります。
例えば、ある日系企業グローバル企業に入社した卒業生は、異文化の橋渡しを担いながら、アフリカ市場でのビジネス展開に貢献しています。
「アフリカでのビジネスの幅を広げられた」「彼らは日本生活が長いので、全部を説明しなくても察してくれる。とても仕事がしやすい」という声も企業からは聞いているそうです。
企業での業務を通じて、日本とアフリカとの架け橋となる役割を果たしつつあり、本人のキャリア形成はもちろん、企業にとっても多様性推進の観点から重要な存在となっています。
こうした事例は、企業が社会的価値のある人材を採用することで得られる相互利益の好例といえます。
今後は卒業生本人や企業の担当者のインタビューを通じ、これまでの経験や日本での生活など現場の声をお届けする予定です。
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