JICA農業普及の柱「SHEP」の進化と広がり!~JICA専門家 山田さんが語る8年間~

■ SHEPへの想いとこれからの展望

ーー最後にSHEPへの想いと今後への期待について教えてください。

▶ 私がSHEPに携わる中で忘れられないエピソードがあります。

2017年、マチャコス・カウンティでの農家モニタリングで出会った農家の言葉で、彼は「SHEPには本当に感謝している。I am boss of myself now(今、私は自分自身の主人だ)」と語ってくれました。


マチャコスで会ったその農家さん

また誰にも指図されず、自分で意思決定し、子どもを大学に入れられるまでの生活ができていると誇らしげに話してくれました。

その言葉から伝わったのは、お金以上に「自分で決めて環境に対応できる力」を得られたことが大きいのだと感じました。

これは農家である私の父の姿にも重なりました。

父も市場を自ら見つけ、自分の努力に見合った対価を得ることを大切にしていました。リスクを取りながら挑戦することの楽しさを、ケニアの農家さんも感じているのだと実感しました。

今後は、農家さんがより関わりやすい形でSHEPの情報やノウハウを届ける仕組みを作っていく必要があります。オンラインでSHEPを学べる試みや、広報用動画やラジオ放送による情報発信も行っていますが、まだ大きなブレイクスルーには至っていません。

さらに多くの農家さんが自発的に参加できる仕組みのためにも、協業できる日系企業やNGO団体と一緒にこのプロジェクトを進めていけたら嬉しいです。

国際的な展開においては、ケニアは2015年頃までは「Kenya as number one, Kenya is a pioneer」と評価されていましたが、地方分権の影響で、マラウイやセネガル、ジンバブエといった国々が国内の制度化において急速に成果を上げ、SHEPを農業普及で使うことが普通になりつつあり、ケニアは先行される状況になっています。

それでも、ケニアの農家さんは利に敏く、計画を行動に移す力があります。表現力にも優れ、モニタリングで訪問した際には、自分たちで築いた成功を共有してくれます。SHEPで野菜販売に成功した農家さんが、野菜販売を続けながらも養鶏や賃貸経営など、新しいことに挑戦する事例を多く見てきました。

だからこそ、国としてもっと本腰を入れ、パートナー連携や学校での実践などを通じて新しい取り組みを生み出してほしいと思います。SHEPの原点であるケニアが再びリーダーシップを発揮し、巻き返していくことを強く期待しています。

ーーDairy SHEPやケニアのこれからの躍進に期待ですね!私もワクワクしてきました。今回は、たくさんの質問にお答えいただき、ありがとうございました!

TICAD9のサイドイベントで登壇!

本インタビューにご協力いただいた山田かおりさんがTICAD Business Expo & Conferenceでパネルディスカッションにご登壇します!

ぜひこの記事を基に現地でのSHEPに関する具体的なお話を直接聞きに行ってみてください。

・TICAD Business Expo&Conference イベントステージ:アフリカ農村部におけるモビリティ・エコシステムの構築と社会課題への対応〜 Songa Mobilityの挑戦

本セッションでは、トヨタ・モビリティ基金が実施しているフィールドでの活動を軸に議論が展開される予定です。山田さんもSHEPでの連携事例をパネリストとして発表します。

SHEPトークの主なテーマは、小規模酪農農家がどのようにモビリティの恩恵を受けているか、およびモビリティが農村部の生活にどのような時間的メリットをもたらしているかという点です。その中で、農村部の小規模農家が直面する課題や「Dairy SHEPの立ち上げ状況」など、SHEPがどのようにこの事業に活かされているかについて、事例共有やコメントをさせていただきます。

【日時】2025年8月20日(水)12:00〜12:45
【会場】パシフィコ横浜 ホールB・C
【申込み】不要 ※参加には会場登録が必要になりますので、本リンクより登録をお願いします。
【詳細/情報元】https://toyotamobilityfoundation.jp/news/release/0157.html

また、山田さんは登壇しませんが、SHEPをテーマにしたJICAテーマ別イベントも開催されます。SHEPにご興味お持ちの方はこちらもぜひご参加ください。

・JICAテーマ別イベント: A Brighter Future for Small-scale Farmers – The Journey and Impact of the SHEP Approach in Africa and beyond –

本イベントでは、「革新的農業普及とは何か?」「小規模農家を効果的に支援するには?」をキークエスチョンに掲げ、SHEP(Smallholder Horticulture Empowerment and Promotion)の最新の展開状況を共有します。アフリカやカリブ諸国など各国での取り組み事例を紹介するとともに、開発パートナーや民間企業との連携のあり方を議論します。さらに、世界銀行の評価ツールを用いたSHEPの効果検証事例も取り上げ、今後の持続的な農業普及の方向性を探ります。

【日時】2025年8月21日(木)16:00〜17:50
【会場】ハイブリッド開催
【詳細/情報元】https://ticad9event.jica.go.jp/jp/event/detail_008.html

取材協力者:山田かおり(JICA専門家)

大阪大学大学院で社会学・社会調査を学び、証券会社勤務や、JICAの研修事業担当を経て、2017年からケニアのSHEPプロジェクトに従事。「No Fun! No SHEP!(楽しくなければSHEPじゃない!)」をモットーに、どうやったらより多くの小規模農家が農業ビジネスを楽しめるか、日々模索している。

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