■ HAKKI AFRICAの社名の由来!
ーー誠実な努力をしている人が報われる社会を、と言うのはまさに現在のHAKKI AFRICAのビジョンに繋がりますね。HAKKIという名前には、七転び八起きの『八起』と、スワヒリ語の発音で「公正な、公平な」という意味があるそうですが、誰が思いついたのですか?
▶︎COOの時田と2人で考えました。スワヒリ語がベースになるのがいいよねということで、初めに「公平性」という意味を持つスワヒリ語の「HAKI」を考えていました。
しかし、すでにHAKIという名前が他の会社で使用されていたみたいで却下されました。そこで、5個か6個か試してみて、一旦Kを足してみたら通ったというだけです(笑)。
そこに後付けで、七転び八起きという意味もあるなという話が出てきました。
ーー偶然の産物とはいえ、とても素敵な名前が見つかりましたね。HAKKIという言葉は、今回が8回目の起業という意味でも、まさに「七転び八起き」という言葉に結びつきますね。
▶︎そうですね。ケニア人にとっても発音しやすく、覚えやすい言葉になってよかったなと思います。
またアフリカ現地で外国人として金融業者をやっていると懐疑的に見られることが多いのですが、「HAKKI」の名前から公正さを連想して、名前を聞くだけで信用してもらえるようにしていきたいと考えています。
ーー会社の顔でもある名前が、ケニア人に対しても好感を与えているというのは良いですね。HAKKIでは『圧倒的スピード、他社が1ヶ月かかる所を1日で完遂する遂行力』を行動規範として掲げていますが、具体的にはどのようにしているのでしょうか。
▶︎働くだけです!(笑)
というのは半分冗談ですが、優秀なメンバーが多く、みんな一生懸命に働いてくれます。
あとは、仕組みの部分を変えることも重要です。
例えば弊社ではM-PESAのAPIを利用した返済の自動記帳システムを作り、効率化を図っています。仮にこれら全てをスプレッドシートベースで行うと、時間もかかり、人為的ミスや不正のリスクもあるため非常に非効率です。
ケニアでは人件費が安いため、わざわざ効率化を図らずとも、人数を多くして対処するという考え方が一般的ですが、システムを活用して優秀な人材に絞ることで、社員にも還元することができています。
無駄な部分・やらなくていい部分を機械に頼り、やりきれない部分を圧縮して人間が遂行していくというやり方が、圧倒的スピードというものを可能にしている一要素です。
ーー効率化とパッションの両方を追い求めているというのはさすがですね。『No.1主義 他社がやりたくない事をすべてやり、圧倒的No.1になる。勝ちにこだわる。』という言葉も見ました。これはどういった思いから書いたのでしょうか。
▶︎No.1主義というのは、また異なる軸で書いています。
弱者が戦う時には色々な戦術を考えなければなりませんが、No.1になって強者になれば強者の戦略が取れると思っています。
マイクロファイナンスでいうと、1,000円程度の小規模の貸し出している業者が多く、ポートフォリオも小さいため弊社の5倍以上の利子を取っているなんてこともあります。先ほど触れたように、業務の効率化ができていないことでローンの管理コストが高く、高金利を設定せざるを得ない業者も多いですが、仕組みから業務を最適化していくことで低金利は実現可能ですし、圧倒的にパフォーマンスが良ければ、優秀な人材も資金も顧客もそこに自然に集まります。
そのため、「No.1にならないと自分たちのやりたいことを実現できない」という意味で書きました。
歴史を見れば、これからアフリカの市場金利は徐々に下がっていくのは明白です。ただ、取れるうちはできるだけ高金利を取っておこうという業者が多い中で、圧倒的No.1になって我々がシェアを取り切ってしまえば、我々の金利より高く参入できる業者はいなくなります。まさに今、ナイロビのタクシードライバー向けファイナンスのマーケットはそうなっています。
従来の金融業者ができなかった仕組み作りで、ケニアの金融市場にメスを入れるリーディングカンパニーになるためには、やはり圧倒的な実績を上げるしかないと思っています。
また、別の視点にはなりますが、No.1の会社として環境や社会への貢献もできるお金の循環を追求することで、自己利益にとどまらない「やさしいお金の流れ」をアフリカにも作っていきたいです。
ーー「やさしさ」という点に着目しながら、しっかりと成果も収めているというのがすごいなと感じます。「社会のために」という思いで事業を行うのは、時にそれが足かせになることもあるのではないでしょうか。
▶︎そうですね。「社会のため」も大事だと思う反面、今はまだ、数字だけでしか判断されないような世の中だなと感じています。
数字だけを見て、「(HAKKIは)めちゃくちゃ高金利じゃん。それって彼らの生活を壊してないの?」と言われることもあります。
ただ、丁寧に説明をすれば、我々のやっていることがちゃんと伝わるとは思っています。
例えば、あるドライバーがこれまで毎日レンタカーで約1,500円を払い続けていて、それでも一生車を持つことができない状態が続いていたとします。その方が我々のファイナンスを受け始めると、約3年半で車が手に入るようになります。
今まで貯金を全くせず、M-PESAの残高も常時3,000KES(約3,000円)くらいしかなかった顧客がいました。その顧客は我々の融資を受け始めた後も、変わらず残高は3,000KES程度ですが、実は車の一部のパーツにお金を使うなどして、3年後に車が手に入ることを見越したお金の使い方もできるようになっています。
こういった事例を丁寧に説明して、何が我々の社会に与えているインパクトで、何が我々の目指している世界なのかを伝えることによって、数字だけでは見えない部分も伝わるのかなと思います。
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