子どもたちの心を変えていった、たき火と映画の力
どうすれば子どもたちが安心して夜をすごせるのか、桜木さんは現地スタッフたちと毎日話し合いました。そしてある時、ウガンダ人スタッフがこう提案しました。
「ぼくたちにとって、“たき火”は特別な文化だ。長老が民話を語り、みんなで歌って踊って演劇をする。それは娯楽であり、たくさんの物語を学ぶ場所だった。今は、戦争のせいでそれができなくなったけど、避難所でなら安全だ。今夜からたき火をしてみないか」
桜木さんたちは翌日さっそく薪を買い、長老を招き、地元のミュージシャンを呼び、みんなでたき火のまわりに集まりました。歌って踊って、たくさん笑い、語りました。
その夜、子どもたちはぐっすり眠ることができたそうです。電気のない、真っ暗なアフリカの夜に星空の下でのたき火には不思議と心を落ち着かせる効果があったようで、毎晩のたき火を半年ぐらい続けると悪夢にうなされる子どもの数はぐっと減りました。
ノートパソコンで小さな映画上映会を実施!
そしてある晩、桜木さんはふと「みんなで映画をみたいな」と思いつきました。できれば、大人向けの映画じゃなくて、子ども向けの「夢があってわくわくする作品」を観せてあげたいと考えました。現地の友人が、英語→アチョリ語(現地の言葉)のライブ吹き替えをしてくれたので、「天空の城ラピュタ」の英語版DVDをみんなで見ました。
小さなノートパソコンの画面を100人ほどでのぞきこんでの鑑賞でしたが、それでも「はじめての映画」にみんな夢中になりました。
その日から、子どもたちは空を見上げては「ラピュータ!」「あそこにある!」「どこどこ」「ほらあそこの雲の中!」と楽しそうに言い合っていたそうです。
そして10年後、その時に初めて映画をみた子だちの一人が大人になり、「星空の下でみんなで観た映画が、大人になった今でも、忘れられない」と言ったことが、本プロジェクトのきっかけとなっています。